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2012年09月18日

10分でわかる「平家物語」巻八「太宰府落」(太宰府を追われ、屋島へと辿り着いた平家)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
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長門国は新中納言知盛卿の国なりけり。目代は紀伊刑部大夫道資といふものなり。平家の小舟どもにのり給へる由承ッて、大舟百余艘点じて奉る。平家これに乗りうつり四国の地へぞわたられける。重能が沙汰として、四国の内をもよをして、讃岐の八島にかたのやうなるいた屋の内裏や御所をぞつくらせける。其程はあやしの民屋を皇居とするに及ばねば、舟を御所とぞ定めける。

大臣殿以下の卿相・雲客、海士の篷屋に日を送り、しづがふしどに夜をかさね、竜頭鷁首を海中にうかべ、浪のうへの行宮はしづかなる時なし。月をひたせる潮のふかき愁にしづみ、霜をおほへる蘆の葉のもろき命をあやぶむ。洲崎に騒ぐ千鳥の声は、暁恨をまし、そはひにかかる梶の音、夜半に心を痛ましむ。遠松に白鷺のむれゐるを見ては、源氏の旗をあぐるかとうたがひ、野鴈の遼海になくを聞きては、兵どもの夜もすがら舟をこぐかとおどろかる。清嵐はだへををかし、翠黛紅顔の色やうやうおとろへ、蒼波眼穿げて、外都望郷の涙、抑へ難し。翠帳紅閨にかはれるは、土生の小屋のあしすだれ、薫炉の煙にことなるは、蘆火たく屋のいやしきにつけても、女房達つきせぬ物思ひに紅の涙せきあへねば、翠の黛みだれつつ、其人とも見え給はず。

平家物語連続講義のこれまでの内容を物語の展開順にまとめました。
「平家物語連続講義放送リスト」
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〈現代語訳〉


長門の国は新中納言平知盛の国であった。目代は紀伊刑部大夫道資(きいのぎょうぶのたいふ・みちすけ)とという者である。平家が漁師の小舟に乗ったとの旨をうかがって道資は、大船を100艘あまりととのえ揃えて平家に献上した。平家はこれに乗り移って四国の地へと渡られた。重能(しげよし)の命令として、四国中から人や財を集めて、讃岐の屋島に、形ばかりの板屋の内裏や御所を作らせた。御所ができるまでの間はいやしい民家を皇居とするわけにはいかないので、舟を安徳天皇の御所と定めた。


大臣以下の、公卿、殿上人は漁師の祖末な家で日を過ごし、卑しいものの寝床で夜を重ねて、天皇の乗った御座舟は海上に浮かんでいて、波の上の仮御所は波にゆられて静かな時はない。月の姿を映した潮のように深い憂いに沈んで、霜におおわれた葦の葉のようにもろい命を危うく思う。洲崎に騒ぐ千鳥の声は明け方に恨みを増し、断崖にひびく舟の梶の音が、夜中に心を痛ませる。遠くの松にしらさぎが群れているのを見ては、源氏が白旗を上げるかと疑い、雁が海上遥かに鳴くのを聴いては、兵たちが一晩中舟を漕ぐのかと、はっとさせられる。潮風は肌を荒れさせて、みどりの眉、血色のよい肌の色も次第に衰え、青い海を見ては目が落ちくぼんで、都を離れて、故郷を思う涙はおさえ難い。みどりのとばりと、赤いとばりで飾った寝室に代わったのは、粘土で塗ったみすぼらしい小屋と、葦でできた簾、香炉から立ち上る煙に代わったのは、葦を焼く家の、貧しい様子であるのにつけても、女房たちはつきない物思いに血の涙をとめられないので、美しい色のまゆずみも乱れて、その人であるとも見えなさらない。


posted by manabiyah at 13:05| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする