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2012年09月18日

10分でわかる「平家物語」巻八「猫間」(義仲の田舎ものぶりを笑うエピソード)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
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泰定都へのぼり院参して、御坪の内にして、関東のやうつぶさに奏聞しければ、法皇も御感ありけり。公卿殿上人も皆ゑつぼにいり給へり。兵衛佐はかうこそゆゆしくおはしけるに、木曾の左馬頭、都の守護してありけるが、たちゐの振舞の無骨さ、物いふ詞つづきのかたくななる事かぎりなし。ことはりかな、二歳より信濃国木曾といふ山里に、三十まですみなれたりしかば、いかでか知るべき。

或時、猫間中納言光高卿といふ人、木曾にのたまひあはすべき事あッておはしたりけり。郎等ども「猫間殿の見参にいり申すべき事ありとて、いらせ給ひて候ふ」と申しければ、木曾大きにわらッて、「猫は人にげんざうするか」。「是は猫間の中納言殿と申す公卿でわたらせ給ふ。御宿所の名とおぼえ候ふ」と申しければ、木曾「さらば」とて対面す。猶も猫間殿とはえいはで、「猫殿のまれまれわいたるに、物よそへ」とぞのたまひける。中納言是を聞いて、「ただいまあるべうもなし」とのたまへば、「いかが、けどきにわいたるに、さてはあるべき」。何もあたらしき物を無塩といふと心えて、「ここに無塩の平茸あり、とうとう」といそがす。根井の小野太陪膳す。

田舎合子のきはめて大きに、くぼかりけるに、飯うづたかくよそひ、御菜三種して、平茸の汁で参らせたり。木曾がまへにもおなじ体にて据ゑたりけり。木曾箸とッて食す。猫間殿は、合子のいぶせさにめさざりければ、「それは義仲が精進合子ぞ」。中納言めさでもさすが悪しかるべければ、箸とてめすよししけり。木曾是を見て、「猫殿は小食におはしけるや。聞ゆる猫おろしし給ひたり。かい給へ」とぞせめたりける。中納言かやうの事に興さめて、のたまひあはすべきことも一言もいださず、やがていそぎ帰られけり。

平家物語連続講義のこれまでの内容を物語の展開順にまとめました。
「平家物語連続講義放送リスト」


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〈現代語訳〉


中原泰定は都にのぼって、院のもとに参上して、中庭で、関東の様子(=頼朝のもてなし)をこまごまと院に報告し申し上げると、後白河法皇も感動なさった。公卿や殿上人もみな笑いのつぼに入りなさった。頼朝はこれほど素晴らしくいらっしゃるが、左馬のかみである木曾義仲は、都の守りをしてはいたが、立ち振る舞いの無骨さや、言葉づかいの乱暴さはいいようがない。当然の事だよ、2歳から信濃の国の木曽という山里に30歳まで住み慣れていたので、どうして都の礼儀作法を知ることができようか。


ある時、猫間の中納言、光高卿という人が、義仲と相談しなさるべき用事があっていらっしゃった。義仲の家来の郎等たちが「猫間どのがお目にかかって申しあげるべきことがあると、いらっしゃっております。」と申したので、義仲は大いに笑って「猫が人に対面するのか。」といった。(家来の郎等が)「これは猫間の中納言と申し上げる公卿でいらっしゃいます。猫間というのは屋敷のある場所の名と思います。」と申したので、義仲は「それならば」といって対面する。義仲はなおも「猫間どの」と言えないで、「猫どのがめずらしくいらっしゃったので、食事の用意をせよ。」とおっしゃった。中納言がこれを聞いて、「ただいまは食事をするつもりはない。」とおっしゃると、義仲は「どうしてだ。食事時にいらっしゃったのに、もてなさないでいられようか。」と言った。義仲は何でも新しいものを無塩というと思っていて「ここに無塩のヒラタケががある。はやく召し上がるがよい。」と促した。根の井のこやたという者が膳の支度をする。


田舎ふうのふた付きの椀で、きわめて大きくくぼんだものに、飯をうずたかくよそって、おかずを三種類そえて、ヒラタケの汁をさしあげた。義仲の前にも同じように据えた。義仲は箸をとって食事をする。猫間どのは、お椀のむさくるしさに召し上がらなかったので、(義仲は)「それは義仲が仏事に使う特別な椀だ」といった。中納言は召し上がらないのも、やはり悪いだろうと思ったので、箸をとって食べる様子をした。義仲はこれを見て「猫どのは小食でいらっしゃるなあ。有名な猫おろしをしなさった、かきこみなされ。」とせめた。中納言はこのようなことに興ざめして、相談なさるべきことも一言も言い出さないで、そのまま急いでお帰りになった。

posted by manabiyah at 13:13| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする