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2012年09月22日

10分でわかる「平家物語」巻八「猫間」その2(木曽義仲の田舎者ぶりを笑ったエピソードの続き)



↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
再生ボタンをクリックして聴くことができます。(各回10分程度)
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繰り返し聴くこともできます。(ページ下に全訳あり。)


牛車は八島の大臣殿の牛車なり。牛飼もそなりけり。世にしたがふ習ひなれば、とらはれてつかはれけれども、あまりの目ざましさに、据ゑ飼うたる牛の逸物なるが、門いづる時、ひとすはへあてたらうに、なじかはよかるべき、飛んで出づるに、木曾、車のうちにてのけに倒れぬ。


蝶のはねをひろげたるやうに、左右の袖をひろげて、おきむおきむとすれども、なじかはおきらるべき。木曾牛飼とはえいはで、「やれ子牛こでい、やれ子牛こでい」といひければ、車をやれといふと心えて、五六町こそあがかせたれ。今井の四郎兼平、鞭あぶみをあはせて、おッついて、「いかに御車をばかうはつかまつるぞ」としかりければ、「御牛の鼻がこはう候」とぞのべたりける。

牛飼なかなほりせんとや思ひけん、「それに候ふ手がたにとりつかせ給へ」と申しければ、木曾手がたにむずととりついて、「あッぱれ支度や、是は牛こでいがはからひか、殿のやうか」とぞ問うたりける。さて院御所に参りついて、車かけはづさせ、うしろより降りむとしければ、京者の雑色につかはれけるが、「車には、めされ候ふ時こそうしろよりめされ候へ。降りさせ給ふには、まへよりこそ降りさせ給へ」と申しけれども、「いかで車であらむがらに、すどほりをばすべき」とて、遂にうしろより降りてンげり。其外おかしき事どもおほかりけれども、恐れて是を申さず。


平家物語連続講義のこれまでの内容を物語の展開順にまとめました。
「平家物語連続講義放送リスト」

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〈現代語訳〉


牛車は、平宗盛の牛車である。牛飼いもそう(=平宗盛に使われていたもの)であった。世の中の流れに従うのが、世の常なので、牛飼いは義仲側にとらえられて使われていたが、あまりの気の食わなさに、つないで飼っていた牛で、とくにすぐれた牛が門を出る時に、ムチをひとふりして当てたので、どうして良いだろうか、良いことになるはずがない…!飛ぶように走り出したので、義仲は車の中で仰向けに倒れてしまった。


(義仲は)蝶が羽を広げたように、左右の袖を広げて、起きよう起きようとしたが、どうして起きられようか、いや、起きられない。義仲は牛飼いということばをいえなくて、「ヤレコージコデイ、ヤレコージコデイ」と言ったので、牛飼いは「くるまをやれ」といっているのだと思って、五六町もそのまま牛車を走らせた。今井四郎兼平は、鞭を打って、鐙を蹴って、馬を走らせて、追いついて、「どうして車をこのように致したのだ」と牛飼いをしかったので、(牛飼いは)「牛の勢いが強いのです。」と述べた。


牛飼いは、仲直りしようと思ったのだろうか、「そこに手をかけるためのくぼみがありますのでつかまってください。」と申したので、義仲はそのくぼみにむんずとつかまって、「ああ、いい設備だ、これは牛飼いの配慮か、宗盛の指示か。」と問いかけた。そして院の御所に参りついて、車から牛を外させて、義仲が車の後ろから降りようとしたので、京のもので雑用係として使われていた者が「車には、お乗りになります時に後ろから乗りますものです。降りなさる時には、前から降りなされ。」と申したが、「どうして車であるからといって通り抜けをするべきだろうか。」といって、義仲はとうとう後ろから降りてしまった。そのほかにも、おかしいことが多かったが、誰も恐れてこれを申し上げなかった。

posted by manabiyah at 08:49| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする