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2012年10月09日

10分でわかる「平家物語」巻八「妹尾最期」(義仲を裏切って再び平家方へと寝返った妹尾太郎兼康)


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或時妹尾太郎、倉光の三郎に逢うて、いひけるは、「去五月より、甲斐なき命を助けられ参らせて候へば、誰を誰とか思ひ参らせ候ふべき。自今以後御いくさ候はば、真前かけて木曾殿に命を参らせ候はん。兼康が知行仕り候ひし備中の妹尾は、馬の草飼よい所で候ふ。御辺申して給はらせ給へ」といひければ、倉光此様を申す。木曾殿「神妙の事申すごさんなれ。さらば汝妹尾を案内者にして、先づくだれ。誠に馬の草なんどをもかまへさせよ」とのたまへば、倉光三郎かしこまり悦んで、其勢卅騎ばかり、妹尾太郎をさきとして、備中へぞ下りける。妹尾が嫡子小太郎宗康は、平家の御方にさぶらふ。父が木曾殿よりゆるされて下ると聞こえしかば、年来の郎等どももよほし集め、其勢五十騎ばかりでむかへにのぼる程に、播磨の国府でゆき逢うて、つれて下る。


備前国みつ石の宿にとどまッたりければ、妹尾がしたしき者共、酒をもたせて出できたり。其夜もすがら悦のさかもりしけるに、あづかりの武士倉光の三郎、所従ともに卅余人、しひふせておこしもたてず、一々に皆さし殺してンげり。備前国は十郎蔵人の国なり。其代官の国府にありけるをも、おし寄せてうッてンげり。「兼康こそいとま給はッてまかり下れ、平家に心ざし思ひ参らせむ人々は、兼康を先として、木曾殿の下り給ふに、矢一つ射かけ奉れ」と披露しければ、備前・備中・備後三箇国の兵ども、馬・物具しかるべき所従をば、平家の御方へ参らせて、やすみける老者ども、或は柿の直垂につめひもし、或は布の小袖に東折し、くさり腹巻つづりきて、山うつぼ・たかえびらに矢ども少々さし、かき負ひかき負ひ、妹尾が許へ馳せ集る。

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〈現代語訳〉


ある時、妹尾太郎兼康(かねやす)が、倉光の三郎成氏(なりうじ)に会って言ったことには、「昨年5月から、どうしようもないわが命を助けられ申し上げましたので、他の誰を特別に思い申し上げましょうか。主人は他にはおりません。これ以降、もしいくさがありますなら、真っ先に戦い、義仲様に命を差し出しましょう。私、兼康が治めておりました備中の妹尾は馬を飼育する牧草に恵まれた良い場所です。あなたから、義仲様に申し上げて、頂きなされ。」と言ったので、倉光はこのことを義仲に申し上げた。義仲は言った。「妹尾は殊勝なことを言っているようだな。ならばお前は妹尾を案内人にして、まず下ってみろ。しっかりと馬の飼い葉の用意をさせろ。」とおっしゃったので、倉光はかしこまって喜んで、軍勢30騎ほどで、妹尾太郎兼康(かねやす)を先に立たせて、備中へと下った。妹尾の嫡子である小太郎宗康(むねやす)は、平家側に仕えていた。「父が義仲から許されてくだる」とうわさになったので、長年つかえてきた家来たちを呼び集め五十騎ほどで迎えていたが、妹尾は播磨の国府でゆき合って、ともに下った。


備前の国、三石という場所の宿(しゅく)に泊まったところ、妹尾の親しいものたちが、人に酒を持たせてやってきた。その夜は一晩中、歓迎の酒盛りをしたが、妹尾太郎の身柄を預かっていた武士も、倉光の三郎も家来30人あまりも、無理に酒を飲ませて酔いつぶし、起こすこともなく、ひとりひとり皆刺し殺してしまった。備前の国は源十郎行家の国である。備前の代官として国府にいたものも押し寄せて討ち取ってしまった。「私、妹尾兼康はひまを頂いて下ってきた。平家への忠義を思い申し上げるような人々は、私を先頭として、義仲殿が下りなさるときには矢をひとつ射かけ申し上げよ。」触れ回ったので、備前・備中・備後三か国の武士たちで、馬や武器、それにふさわしい家来たちを平家方に出陣させて、引退していた老いたものたちは、あるものは柿渋で染めたひたたれに紐を結んで、あるものは布の小袖を裾を帯に挟んで、くさり腹巻きを修理して身につけ、山狩り用の祖末な容れ物に矢を少しさして、おのおのがそれを背負って、妹尾のもとへ急いで集まった。

posted by manabiyah at 21:08| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする