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2012年11月24日

10分でわかる「平家物語」巻九「生ずきの沙汰」(馬を巡って二人の武士の間におこったトラブル)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
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梶原源太うちよッて、「それはたが御馬ぞ」。「佐々木殿の御馬候ふ」。其時梶原「やすからぬ物なり。おなじやうにめしつかはるる景季 を佐々木におぼしめしかへられけるこそ遺恨なれ。みやこへのぼッて、木曾殿の御内に四天王と聞ゆる今井・樋口・楯・根井にくんで死ぬるか、しからずは西国へむかうて、一人当千と聞ゆる平家の侍どもと軍して死なんとこそ思ひつれども、此御気色ではそれもせんなし。ここで佐々木にひッくみさしちがへ、よい侍二人死ンで、兵衛佐殿に損とらせ奉らむ」とつぶやいてこそ待ちかけたれ。


佐々木四郎はなに心もなくあゆませて出できたり。梶原、おしならべてや組む、むかふさまにやあておとすと思ひけるが、まづ詞をかけけり。「いかに佐々木殿、いけずきたまはらせ給てさうな」と言ひければ、佐々木、「あッぱれ、此仁も内々所望すると聞し物を」と、きッと思ひいだして、「さ候へばこそ。此御大事にのぼりさうが、定めて宇治・勢田の橋をばひいて候らん、乗ッて河わたすべき馬はなし、いけずきを申さばやとは思へども、梶原殿の申されけるにも、御ゆるされないと承る間、まして高綱が申すともよもたまはらじと思ひつつ、後日にはいかなる御勘当もあらばあれと存じて、暁たたんとての夜、舎人に心を合はせて、さしも御秘蔵候いけずきを、ぬすみすまいて、のぼりさうはいかに」といひければ、梶原この詞に腹がゐて、「ねッたい、さらば景季もぬすむべかりける物を」とて、どッとわらッてのきにけり。


平家物語連続講義のこれまでの内容を物語の展開順にまとめました。
「平家物語連続講義放送リスト」


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生喰の沙汰・宇治川先陣──イッセー尾形
河原合戦・三草勢揃──木場勝己
木曾最期──野村万作
二度之懸──國府田達也
坂落──茂山逸平
忠度最期──下條アトム
重衡生捕──片岡愛之助
敦盛最期──岡橋和彦
知章最期──坂田美子
落足──広瀬彩
小宰相身投──若村麻由美
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〈現代語訳〉


梶原源太景季(かげすえ)は下人のもとに寄っていき尋ねた。(梶原)「それは誰の馬だ。」(下人)「佐々木殿の馬でございます。」その時梶原が言った。「それは穏やかでないことだ。同じように頼朝様に召しつかわれている私、景季(かげすえ)なのに、佐々木へと信頼を移し替えなさったのは恨めしい。都にのぼって、義仲殿の家来で四天王という評判の、今井・樋口・楯(たて)・根井(ねのい)と組み合って死ぬか、そうでなければ西国にむかって、一人で千人を相手にできるという噂の平家の武士たちといくさをして死のうと思っていたのに、頼朝様がこのようなご様子では、そんなことをしても仕方ない。ここで佐々木と組み合ってさしちがえて、良い武士二人が死んで頼朝殿に損をさせ申し上げよう。」とつぶやいて佐々木を待ち構えた。


佐々木四郎は、なんという心もなく、馬を歩ませて現れた。梶原は思った。「馬を押し並べて組もうか。正面から向かい合って馬をあてて落馬させようか。」と思ったが、まずは言葉をかけた。「なんと佐々木殿、いけずきを頂きなさったのですな。」と言ったところ、佐々木は「ああ、このお方も内々でこのいけずきを所望していたと聞いていたなあ。」とふと思い出して、「そのことでございますが実は、今回の大事で都にのぼりますのだが、きっと宇治や勢田の橋板を外しているでしょう。しかし私には乗って河をわたるべき馬がない。いけずきを欲しいと頼朝様に申し上げたいと思ったが、梶原殿が申されても、許されないと承ったので、まして私高綱は申したとしても、まさかくださらないだろうと思いながら後にどうのようなお叱りもあるならばそれでいいと思って、『翌朝、出発しよう』という夜に、下人と心を合わせて、あれほど大事に秘蔵されていました「いけずき」をまんまと盗み終えて上京しましたのですがどうでしょう。」と言ったので、梶原はこのことばに腹が落ち着いて「ねたましいことだ。それなら私景季(かげすえ)も盗むべきだったのになあ。」と言って、どっと笑って去っていった。

posted by manabiyah at 09:49| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする