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2013年01月28日

10分でわかる「平家物語」巻九「三草勢揃」(三種の神器をとりもどすべく平家追討を命じられる源氏)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
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正月廿九日、範頼・義経院参して、平家追討のために西国へ発向すべきよし奏聞しけるに、「本朝には神代よりつたはれる三の御宝あり。内侍所・神璽・宝剣これなり。相構て事故なくかへしいれ奉れ」と仰せ下さる。両人かしこまり承ッてまかりいでぬ。



同二月四日、福原には、故入道相国の忌日とて、仏事かたのごとくおこなはる。あさゆふのいくさだちに、過ぎゆく月日は知らねども、こぞはことしにめぐりきて、憂かりし春にも成りにけり。世の世にてあらましかば、いかなる起立塔婆のくはだて、供仏施僧のいとなみもあるべかりしかども、ただ男女の君達さしつどひて、泣くより外の事ぞなき。其次に叙位除目おこなはれて、僧も俗もみなつかさなされけり。門脇中納言、正二位大納言になり給ふべきよし、大臣殿より宣ひければ、教盛卿、

 けふまでもあればあるかのわが身かは夢のうちにも夢を見るかな

と御返事申させ給ひて、つひに大納言にもなりたまはず。大外記中原師直が子、周防介師純、大外記になる。兵部少輔正明、五位蔵人になされて蔵人少輔とぞいはれける。昔将門が東八ケ国をうちしたがへて、下総国相馬郡に都をたて、我身を平親王と称して、百官をなしたりしには、暦博士ぞなかりける。これはそれには似るべからず。旧都をこそおち給ふといへども、主上三種の神器を帯して、万乗の位にそなはり給へり。叙位除目おこなはれんも僻事にはあらず。


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〈現代語訳〉


寿永三年1月29日、源範頼・義経が院のもとに参って、平家追討のために西国へ出発することを申し上げたところ、「我が国には神の時代から伝わっている三つの宝がある。やたの鏡、やさかの曲玉、あめのむらくもの剣がこれである。よくよく心して、無事にとり返し申し上げよ。」と命令を下さった。二人はともにつつしんで承って退出した。


同じく寿永3年2月4日、福原では、故平清盛入道の命日だとして、仏事が形式通りに行われていた。戦いの日々の中で、月日が過ぎ去っていくのも気がつかないが、去年から今年へと年はめぐり来て、清盛の亡くなったつらく悲しい春の季節になった。世が世であったならば、どんなに供養のための塔婆の建立や、仏への供養や、僧への布施などのいとなみもあっただろうが、今はただ男女の公達が集まって、泣く以外のことはない。その機会に叙位や除目が行われて、僧も在俗のものも皆官職を任じられた。門脇の中納言平教盛正二位の大納言になりなさるべき旨、平宗盛殿からおっしゃったところ、教盛は歌を詠んだ。


「今日まで 生きていられるいられないか 危うかった我が身は 夢の中でも 夢を見たのだなあ」


とお返事もうしあげなさって、とうとう大納言には、なられなかった。大外記(だいげき)であった中原師直の子、周防介師純が大外記になった。兵部少輔正明を五位の蔵人にされて、蔵人少輔と言われた。昔、平将門が東国8か国を従えて、下総の国、相馬郡で都をつくって、自身を新王と称して、百官を任命したときは、暦の博士がいなかった。今回の平家の任官は、将門に似るはずもない。平家は都落ちをしなさったといっても、天皇が三種の神器を所持して、帝位についていらっしゃった。叙位や除目が行われることも間違いではない。

posted by manabiyah at 12:01| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする