「平家物語」各場面の原文朗読・現代語訳・解説の音声ファイルを公開しています。
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2013年02月15日

10分でわかる「平家物語」巻九「老馬」(平教経が武士の気概を見せる)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
再生ボタンをクリックして聴くことができます。(各回10分程度)
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繰り返し聴くこともできます。(ページ下に全訳あり。)


大臣殿は安芸右馬助能行を使者で、平家の君達のかたがたへ、「九郎義経こそ、三草の手をせめおといて、すでにみだれ入り候ふなれ。山の手は大事に候ふ。おのおのむかはれ候へ」とのたまひければ、みな辞し申されけり。能登殿のもとへ「たびたびの事で候へども、御へんむかはれ候ひなんや」とのたまひつかはされたりければ、能登殿の返事には、「いくさをば我身ひとつの大事ぞと思うてこそよう候へ。狩、漁なンどのやうに、足だちのよからう方へはむかはん、あしからう方へはむかはじなど候はんには、いくさに勝つ事よも候はじ。いくたびでも候へ、こはからう方へは、教経、承ッてむかひ候はん。一方ばかりはうちやぶり候ふべし。御心やすう思し召され候へ」と、たのもしげにぞ申されける。大臣殿なのめならず悦びて、越中前司盛俊を先として、能登殿に一万余騎をぞつけられける。



兄の越前三位通盛卿あひ具して山の手をぞかため給ふ。山の手と申すは鵯越のふもとなり。通盛卿は能登殿の仮屋に北の方むかへ奉ッて、最後のなごり惜しまれけり。能登殿大きにいかッて、「此手はこはい方とて、教経をむけられて候ふなり。誠にこはう候ふべし。只今も上の山より源氏ざッとおとし候ひなば、とる物もとりあへ候はじ。たとひ弓をもッたりとも、矢をはげずはかなひがたし。たとひ矢をはげたりとも、ひかずは、なほ悪しかるべし。まして、さやうにうちとけさせ給ひては、なんの用にか、たたせ給ふべき」といさめられて、げにもとや思はれけん、いそぎ物の具して、人をばかへし給ひけり。



平家物語連続講義のこれまでの内容を物語の展開順にまとめました。
「平家物語連続講義放送リスト」
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〈現代語訳〉


平宗盛殿は安芸の右馬助能行を使者として、平家の公達の皆々へ伝えたことには「源九郎義経は三草の軍勢を攻め落として、早くも一の谷の方に乱入して来ようとしているそうです。山の方面が危険でございます。あなた方がむかってくださらないか。」とおっしゃったところ、皆、辞退し申し上げた。宗盛は能登のかみ・平教経(のりつね)のもとへ「たびたびの事でございますが、あなたがむかってくれないだろうか。」とお伝えになられると、教経の返事には「いくさを自分の身に取って一大事のことと思ってこそ、充分に戦えるのです。狩りや、漁などをするかのように、『足場のよい方へ行こう、悪い方には行くまい』などと言っておりますなら、戦いに勝つことはまさかないでしょう。何度でも良いでしょう、手強い方面へは、私教経が承って、戦いにむかいましょう。自分の受け持った方面だけは敵をうちやぶりましょう。安心にお思いになってください。」と頼もしそうに申された。平宗盛殿は大変によろこんで、越中の前司、盛俊をはじめとして、能登殿平教経に1万騎をおつけになった。


教経の兄の越前の三位、通盛(みちもり)卿はともに山の方面の陣をかためなさった。山の方と申すのはひよどりごえのふもとである。通盛卿は能登殿の戦陣の仮小屋に、奥方を迎えもうしあげて、最後の名残を惜しまれた。能登殿は大いに怒って「この方面は手強い敵だということで、こちらに私教経は、さしむけられたのです。本当に手強い敵でございましょう。たった今にでも上の山から源氏がザッと駆け下りて攻めて来てしまいましたなら、武器をとる間もございませんでしょう。たとえ、弓を持っていても、矢をつがえなければどうしようもないでしょう。たとえ、矢をつがえても引かないなら、なお悪いでしょう。まして、そのように打ち解けていらっしゃっては、何の役にもお立ちにならないでしょう。」と諌められて、(通盛は)「もっともだ」と思われたのだろうか、急いで鎧かぶとを身につけて、奥方をお返しになった。

posted by manabiyah at 18:47| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする