「平家物語」各場面の原文朗読・現代語訳・解説の音声ファイルを公開しています。
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2013年02月15日

10分でわかる「平家物語」巻九「老馬その2」(地元の猟師に一の谷の地形を尋ねて、馬での攻撃を決意する源義経)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
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繰り返し聴くこともできます。(ページ下に全訳あり。)


「これより平家の城郭一谷へおとさんと思ふはいかに」。「ゆめゆめ叶ひ候ふまじ。卅丈の谷、十五丈の岩さきなど申す所は、人のかよふべき様候はず。まして御馬などは思ひもより候はず」。其うへ、城のうちにはおとしあなをもほり、ひしをも植ゑて待ち参らせ候らん」と申す。さて、さやうの所は鹿はかよふか」。「鹿はかよひ候ふ。世間だにもあたたかになり候へば、草の深いに伏さうどて、播磨の鹿は丹波へこえ、世間だにさむうなり候へば、雪のあさりに食まんとて、丹波の鹿は播磨の印南野へかよひ候ふ」と申す。


御曹司「さては馬場ごさんなれ。鹿のかよはう所を馬のかよはぬやうやある。やがてなんぢ案内者仕れ」とぞのたまひける。此の身はとし老いて叶ふまじいよしを申す。「汝が子はないか」。「候ふ」とて、熊王と云童の、生年十八歳になるを奉る。やがて、もとどりとりあげ、父をば鷲尾庄司武久といふ間、これをば鷲尾の三郎義久と名乗らせ、さきうちせさせて案内者にこそ具せられけれ。平家追討の後、鎌倉殿になかたがうて、奥州でうたれ給ひし時、鷲尾三郎義久とて、一所で死にける兵物なり。



平家物語連続講義のこれまでの内容を物語の展開順にまとめました。
「平家物語連続講義放送リスト」

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【アイテム紹介】この場面で、老いた猟師を義経の前に連れて来るのは武蔵坊弁慶ですが、実は弁慶が活躍する場面は「平家物語」中にはほとんどありません。弁慶の活躍を描いている作品は「義経記」です。「義経記」はちょうど平家物語で描いている物語の前後に該当する時代の義経の人生を物語としている作品です。世の中に知られている義経や弁慶のイメージはこの「義経記」に描かれた像によるところが大きいです。この小学館のバージョンは原文と現代語訳が段組みになっていて、読みやすく、注釈もしっかりと施されています。義経について、もっと深く知りたい方は是非「義経記」を。なお、この場面で述べられている「鷲尾三郎義久とて、一所で死にける兵物」という部分も詳しくは「義経記」に記されています。

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新編日本古典文学全集 62 義経記

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〈現代語訳〉


(義経)「ここから平家の城郭のある一の谷へ馬で駆け下りようと思うがどうか。」(猟師)「決してかなうことでございませんでしょう。三十丈の谷、十五丈の岩などと申す場所は、人が通れる様子ではございません。まして馬で駆け下りるなどとは思いもよりません。その上に城の中には落とし穴を掘って、ひしをも植えて待ち申し上げているでしょう。」と申した。(義経)「それではその場所は鹿は通るか。」(猟師)「鹿は通ります。あたりさえ、あたたかになりますと、草の深いところで伏せようとして、播磨の鹿は丹波へとこえていき、あたりさえ寒くなりますと、雪の浅いところで餌をとろうとして、丹波の鹿は播磨のいなみのへと通います。」と申し上げる。


「それならば馬が通れる場所であるようだ。鹿が通れる所を馬が通れないことがあるか、いや無い。すぐにお前が案内者をいたせ。」と義経はおっしゃった。(猟師は)「私の身は年老いていて、それはできない」との旨を申した。(義経)「お前の子はいないのか」(猟師は)「おります」といって、熊王という童で、生年十八歳になるものをさしあげた。そのまますぐに、髪を結って元服させて、父の名を鷲尾(わしお)の庄司(しょうじ)武久(たけひさ)といったので、この息子を鷲尾の三郎義久(よしひさ)と名乗らせて、先導をさせて、案内者としてお連れになった。平家を追討した後に、義経が頼朝と対立して、奥州でうたれなさった時に、鷲尾三郎義久といって、義経と同じところで死んだ武者である。


posted by manabiyah at 18:51| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする