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2013年03月13日

10分でわかる「平家物語」巻九「二度之懸」(平家の陣の東側、生田の森の先陣争い)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
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大手生田の森にも源氏五万余騎でかためたりけるが、其勢のなかに武蔵国住人、河原太郎・河原次郎といふものあり。河原太郎弟の次郎をようでいひけるは、「大名は我と手をおろさねども、家人の高名をもッて名誉す。われらはみづから手をおろさずはかなひがたし。かたきをまへにおきながら、矢一つだにも射ずして、まちゐたるがあまりに心もとなう覚ゆるに、高直はまづ城の内へまぎれ入ッて、ひと矢射んと思ふなり。されば千万が一も生きてかへらん事ありがたし。わ殿はのこりとどまッて、後の証人にたて」といひければ、河原次郎涙をはらはらとながいて、「口惜い事をものたまふ物かな。ただ兄弟二人ある物が、兄をうたせて弟が一人のこりとどまッたらば、いく程の栄花をかたもつべき。所々でうたれんよりも、一所でこそいかにもならめ」とて、下人どもよびよせ、最後の有様妻子のもとへいひつかはし、馬にものらずげげをはき、弓杖を突いて、生田森の逆茂木をのぼりこえ、城のうちへぞ入りたりける。星明かりに鎧の毛もさだかならず。


河原太郎大音声をあげて、「武蔵国住人、河原太郎私市高直、同次郎盛直、源氏の大手生田森の先陣ぞや」とぞ名乗ッたる。平家の方には是を聞いて、「東国の武士ほど恐ろしかりけるものはなし。是程の大勢の中へただ二人入りたらば、何ほどの事をかしいだすべき。よしよししばし愛せよ」とて、うたんといふものなかりけり。


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〈現代語訳〉


大手の生田の森にも源氏は5万騎で陣を固めていたが、その軍勢の中に武蔵の国の住人である河原太郎、次郎というものがいた。河原の太郎が弟の次郎を呼んでいったことには「大名は直接自分の手が手を下さずとも、家来の高名によって名誉を得られる。我々は自ら手を下さずには、名誉を得ることはできない。敵を前にしながら、矢ひとつさえも射ないで、待っているのはあまりにもじれったく思われるので私、高直は真っ先に城の中に入っていって、ひと矢射ようと思うのだ。そうなると千万にひとつも生きて帰るようなことはないだろう。お前は残りとどまって、後の証人となれ。」と言ったので、弟である河原の次郎は涙をはらはらと流して「残念なことをおっしゃるものだなあ。兄弟たった二人であるものが、兄を討たせて、弟がひとり残ったところで、どれほどの栄華を保てましょうか。別々に討たれるよりも、同じところで死のう。」といって、下人たちを呼び寄せて、自分たちの最後の様子を妻や子のもとに言い遣わして、馬にも乗らずに藁のゾウリを履いて、弓を杖について、生田の森のさかもぎをのぼり越えて、敵の城の中に入っていった。まだ暗く星明かりで鎧の紐の色もはっきりしない。


河原の太郎は大声をあげて言った。「武蔵の国の住人、河原の太郎私市(きさいち)高直(たかなお)、同じき次郎盛直(もりなお)は、源氏の大手、生田の森の先陣である。」と名乗った。平家の側ではこれをきいて「東国の武士ほど恐ろしかったものはない。これほど大軍の中へたった二人入ったとして、どれほどのことができるというのか、よいよいしばらく可愛がってやれ。」と討とうという者はいなかった。


posted by manabiyah at 16:34| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする