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2013年04月03日

10分でわかる「平家物語」巻九「坂落」(40メートル以上もある垂直な岸壁をかけおりていく義経軍)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
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繰り返し聴くこともできます。(ページ下に全訳あり。)


御曹司城郭はるかに見わたいておはしけるが、「馬ども、おといてみむ」とて、鞍置馬を追ひおとす。或は足をうち折ッて、ころんで落つ、或は相違なく落ちてゆくもあり。鞍置馬三疋、越中前司が屋形の上に落ちついて、身ぶるひしてぞ立ッたりける。御曹司是をみて「馬どもはぬしぬしが心得ておとさうには、損ずまじいぞ。くはおとせ、義経を手本にせよ」とて、まづ卅騎ばかり、まッさきかけて落されけり。大勢みな続いておとす。後陣におとす人々のあぶみの鼻は、先陣の鎧甲にあたるほどなり。小石まじりのすなごなれば、ながれおとしに二町計ざッとおといて、壇なるところにひかへたり。



それよりしもを見くだせば、大盤石の苔むしたるが、つるべおとしに十四五丈ぞくだッたる。兵どもうしろへとてかへすべきやうもなし、又さきへおとすべしともみえず。「ここぞ最後」と申して、あきれてひかへたるところに、佐原十郎義連すすみ出でて申しけるは、「三浦の方で我等は鳥一つたてても、朝夕かやうの所をこそ馳せありけ。三浦の方の馬場や」とて、まッさきかけておとしければ、兵ども、みなつづいておとす。ゑいゑい声をしのびにして、馬にちからをつけておとす。あまりのいぶせさに、目をふさいでぞおとしける。おほかた人のしわざとは見えず。ただ鬼神の所為とぞ見えたりける。



平家物語連続講義のこれまでの内容を物語の展開順にまとめました。
「平家物語連続講義放送リスト」
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【アイテム紹介】「平家物語」の入門書としては最強のわかりやすさだと思います。それもそのはず、著者の千明守氏は、代々木ゼミナール講師の椎名守。予備校講師としても一流の著者による解説です。文体は架空の生徒と先生のやりとりの形式になっていて、大変に読みやすい本です。イラストなども豊富に使われていて、読んでいて眠くなりません。「平家物語」の参考書を買うならば、1冊目に選ぶべき本はこの「平家物語が面白いほどわかる本」です!

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〈現代語訳〉


義経は、平家の城郭をはるかに上から見渡していらっしゃったが、馬を落としてみようと、鞍を置いた馬を追い落とした。ある馬は足を折って、ころんで落ちた。ある馬は無事にかけて落ちていくものもあった。鞍を置いた馬3びきが、越中の前司の仮に構えた宿舎に無事にくだりついて、身震いして立った。義経はこれを見て、「馬達は乗るものがそれぞれ注意して坂を落とせば傷つくことはないだろう。さあ、落とせ。私義経を手本にしろ。」と言って、まず30騎ほどを連れて、先頭をかけて馬を攻め落とした。たくさんの軍勢がみな続いて馬で駆けおりる。後ろ側の陣でくだる人々のあぶみの先は、先陣の鎧甲にぶつかるくらいである。地盤は小石のまじった砂であるので、流れるように落ちて二町ほどざっと一気にくだって、壇のようになっているところでいったんとまる。


そこから下を見下ろすと、苔むした大きな岩壁が、垂直に十四、五丈くだっていた。武士達はもう後ろへとって返すこともできない。またこれ以上先に馬を落とせそうにも思われない。「もはやここまでか」と申して、茫然ととまっているところに、佐原の十郎義連(よしつら)が進み出て申したことには「三浦半島の方で我々は、鳥をひとつ追い立てるにしても、朝夕このくらいのところを馬でかけまわっている。三浦の地方の馬の訓練所のようなものだ。」と真っ先に駆け出して馬でくだっていったので、武士達はみな続いて馬で駆け下りた。えいえいという声をひそやかにかけて、馬を力づけながら落としていく。あまりの恐怖に目をふせいで馬を落とした。まったく人間のすることとは思われない。ただ鬼神のなすわざだと見えた。



posted by manabiyah at 07:22| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする