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2013年04月14日

10分でわかる「平家物語」巻九「忠度最期」(和歌の名手として知られた平忠度の最期)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
再生ボタンをクリックして聴くことができます。(各回10分程度)
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繰り返し聴くこともできます。(ページ下に全訳あり。)


薩摩守「にッくいやつかな。みかたぞといはばいはせよかし」とて、熊野そだち大力のはやわざにておはしければ、やがて刀をぬき、六野太を馬の上で二刀、おちつくところで一刀、三刀までぞつかれける。二刀は鎧の上なればとほらず、一刀は内甲へつき入れられたれども、うす手なれば死なざりけるをとッておさへて、頸をかかんとし給ふところに、六野太が童おくればせに馳せ来て、打刀をぬき、薩摩守の右のかひなを、ひぢのもとよりふつときりおとす。今はかうとや思はれけん、「しばしのけ、十念となへん」とて、六野太をつかうで弓だけばかり投げのけられたり。其後西にむかひ、高声に十念となへ、「光明遍照十方世界、念仏衆生摂取不捨」と宣ひもはてねば、六野太うしろより寄ッて薩摩守の頸をうつ。



よい大将軍うッたりと思ひけれども、名をば誰とも知らざりけるに、箙にむすび付けられたる文をといて見れば、「旅宿花」といふ題にて、一首の歌をぞよまれたる。



 ゆきくれて木のしたかげをやどとせば花やこよひのあるじならまし



忠度とかかれたりけるにこそ、薩摩守とは知りてンげれ。太刀のさきにつらぬき、高くさしあげ、大音声をあげて、「この日来平家の御方にきこえさせ給ひつる薩摩守殿をば、岡辺の六野太忠純がうち奉ッたるぞや」と名のりければ、敵もみかたも是を聞いて、「あないとをし、武芸にも歌道にも達者にておはしつる人を、あたら大将軍を」とて、涙をながし袖をぬらさぬはなかりけり。



平家物語連続講義のこれまでの内容を物語の展開順にまとめました。
「平家物語連続講義放送リスト」

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吟詠 平家物語

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〈現代語訳〉


薩摩守平忠度は言った。「にくいやつであるよ、味方だと言ったのなら、そのまま言わせておけ。」(忠度は)熊野育ちで、怪力で早業のものであったので、すぐに刀をぬいて、六野太を馬の上で、二度、刀で切りつけ、落ち着いたところで、ひとふり、さらに三度までも刀でお突きになった。ふたさしは、鎧の上であったので刀が通らない。ひとふりは、相手のかぶとのうち側へと突き刺さったのだが、軽い傷なので死ななかった所を、とりおさえて、忠度が六野太の首を切ろうとしなさった時に、六野太につかえる童が遅れて馳せ参じて、つばのついた長い刀を抜いて、忠度の右のうでを肘のもとからふっと切り落とした。忠度は「もはやこれまで」と思われたのだろうか、「しばらくどいていろ、念仏を十回となえよう」といって、六野太をつかんで、弓の長さほど、投げのけられた。そのあと、忠度は西に向かって、声をあげて十度念仏をとなえて、「光明遍照(こうみょうへんじょう)十方(じっぽう)世界、念仏衆生(ねんぶつしゅじょう)摂取不捨(せっしゅふしゃ)」と、忠度が言い終わりなさらないうちに、六野太が後ろから寄っていき、薩摩守忠度の首を討った。


六野太は、身分の高い大将軍をうちとったと思ったが、名前を誰とも知らなかったのだが、矢を入れるえびらにむすび付けられた文をといて見ると、「旅の宿の花」という題で一首の歌をお詠みになっていた。


「旅に行き日が暮れて もし桜の木の下を 宿としたなら 桜の花が今夜の宿の あるじとなるだろう」


「忠度」と書かれてあったことによって、薩摩守であったと知ったのであった。太刀の先に忠度の首をつらぬいて、高くさしあげて、六野太は大声をあげて言った。「常日ごろ、平家の武将として名の知られなさっていた薩摩守忠度を、この岡部の六野太忠純がうちとり申し上げたぞ。」と、名乗ったところ、敵も味方もこのことを聞いて、「ああ気の毒だ、武芸にも歌の道にもすぐれていらっしゃった人を、もったいない大将軍を。」と、涙を流さない者、袖を濡らさない者はいなかった。

posted by manabiyah at 18:14| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする