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2013年06月06日

10分でわかる「平家物語」巻十「首渡」その2(妻子と離れて屋島にいる平維盛の嘆き)


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まづ北の方への御文には、「都にはかたきみちみちて、御身一つの置き所だにあらじに、幼き者ども引き具して、いかにかなしうおぼすらん。是へむかへたてまつッて、一所でいかにもならばやとは思へども、我身こそあらめ、御ため心ぐるしくて」などこまごまと書きつづけ、おくに一首の歌ぞありける。


 いづくともしらぬあふせのもしほ草かきおくあとをかたみともみよ


幼き人々の御もとへは、「つれづれをばいかにしてか慰さみ給ふらむ。いそぎむかへとらんずるぞ」と、言葉もかはらず書いてのぼせられけり。此御文共を給はッて、使都へのぼり、北方に御文参らせたりければ、今さら又なげきかなしみ給ひけり。使四五日候ひて、いとま申す。北方なくなく御返事かき給ふ。若公姫君筆をそめて、「さて父御ぜんの御返事は何と申すべきやらん」と問ひ給へば、「ただともかうも、わ御前たちの思はんやうに申すべし」とこそのたまけれ。「などや今までむかへさせ給はぬぞ。あまりにこひしく思ひ参らせ候ふに、とくとくむかへさせ給へ」と、おなじ言葉にぞかかれたる。此御文共を給はッて、使八島にかへり参る。


三位中将、まづ幼き人々の御文を御覧じてこそ、いよいよせん方なげにはみえられけれ。「そもそも是より穢土を厭ふにいさみなし。閻浮愛執の綱つよければ、浄土をねがふも、ものうし。唯是より山づたひに都へのぼッて、こひしきものどもを今一度見もし、見えての後、自害をせんにはしかじ」とぞ、泣く泣くかたり給ひける。


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「平家物語連続講義放送リスト」
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〈現代語訳〉


まず奥方へのお手紙に「都には敵が満ち満ちていて、あなた一人の身の置き場さえないだろうに、幼い子たちを連れていて、あなたはどんなに悲しくお思いになっているだろう。こちらへお迎えもうしあげて、同じ場所でどのようにでもなりたいと思うが、自分だけならよいだろうが、あなたのためにはいたたまれなくて。」などと細々と書きつらねて、奥に一首の歌があった。


「どこでまた 会えるとも知らない 塩をとるためにかきあつめる茂塩草ではないが 書き置くこの手紙を 形見としてみてください」


幼いわが子二人のもとに書いた手紙は、「さびしさをどのようにして慰めていなさるのだろうか。急いでこちらに迎えとろう。」と、同じ文面で二人の子に書いて都へと送る。この手紙をいただいて、使いの者は都へのぼり、奥方に手紙をさしあげたところ、奥方はよりいっそう嘆き悲しみなさった。使いの者は四、五日お仕えもうしあげて、おいとま申しあげる。奥方は泣きながらお返事を書きなさる。若君と姫君は筆をとって「それにしても父上へのお返事に何をもうしあげるべきであろうか。」と問いかけなさると、「ただともかく、あなた達の思うように申し上げれば良い。」と奥方は子らにおっしゃった。「どうして今までお迎えにならなかったのですか。あまりに恋しく思い申しあげておりますので、はやくはやくお迎えになってください。」と、二人とも同じ文面で書かれた。このお手紙を頂いて、使いは屋島に帰り参った。


維盛はまず、幼い子どもらの手紙をご覧になって、ますますどうしようもないほどの切ない様子にお見えになった。「もう私はこの現世を嫌って出家する気力がない。現世における愛する者への執着心が強過ぎるので、極楽浄土を願うのも気がすすまない。ただこれから山をつたって都にのびり、恋しいものたちにもう一度会って、会ったのちに、自害をするのが一番だ。」と、維盛は泣く泣く語りなさった。


posted by manabiyah at 08:04| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする