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2013年07月24日

10分でわかる「平家物語」巻十「高野巻」(出家を決意した平維盛が、滝口入道を訪れる)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
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繰り返し聴くこともできます。(ページ下に全訳あり。)


滝口入道、三位中将を見奉ッて、「こはうつつとも覚え候はぬものかな。八島より是までは、何として逃れさせ給ひて候ふやらん」と申しければ、三位中将のたまひけるは、「さればこそ。人なみなみに都を出て、西国へ落ちくだりたりしかども、ふるさとにとどめをきし幼き者どもの恋しさ、いつ忘るべしとも覚えねば、その物思ふ気色の言はぬにしるくや見えけん、大臣殿も二位殿も、『此人は池の大納言のやうにふた心あり』なンどとて、思ひへだて給ひしかば、あるに甲斐なき我身かなと、いとど心も留まらで、あくがれ出て、是までは逃れたるなり。いかにもして山伝ひに都へのぼッて、恋しき者どもを、今一度見もし見えばやとは思へども、本三位中将の事口惜しければ、それも叶はず。おなじくは是にて出家して、火の中水の底へもいらばやと思ふなり。ただし熊野へ参らんと思ふ宿願あり」とのたまへば、「夢まぼろしの世の中は、とてもかくても候ひなん。ながき世のやみこそ心うかるべう候へ」とぞ申しける。やがて滝口入道を先達にて、堂塔巡礼して、奥の院へ参り給ふ。

高野山は帝城を避ッて二百里、郷里をはなれて無人声、青嵐梢をならして、夕日の影しづかなり。八葉の嶺、八つの谷、まことに心もすみぬべし。花の色は林霧の底にほころび、鈴の音は尾上の雲にひびけり。瓦に松おひ、墻に苔むして、星霜久しく覚えたり。



平家物語連続講義のこれまでの内容を物語の展開順にまとめました。
「平家物語連続講義放送リスト」

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〈現代語訳〉


滝口入道は三位中将維盛を見申し上げて、「これは現実だとは思えないことですなあ。屋島からここまで、どうやって逃れていらっしゃったのでしょうか。」と申したので、維盛がおっしゃったことには「そのことだが、私は他の人々と同じく都を出て、西国へと落ちくだったのだが、故郷に残していった幼い子たちへの恋しさが、いつ忘れられるとも思わなかったので、その悩む様子が、口に出さなくとも、はっきりと見えたせいだろうか、宗盛殿も、二位の尼殿も、『維盛はあの平頼盛のように二心があるのだ』と、思いへだてなさったので、『生きていても仕方が無い我が身だな』と、ますます心も落ち着かず屋島を離れて、ここまで逃れたのである。どうにかして山伝いに都へのぼって、恋しい者達にもう一度会い、私の姿を見せたいとも思うが、平重衡中将のことが残念であって、それも叶わない。同じ事ならここで出家して、火の中でも、水の底でも入りたいと思うのだ。ただ、熊野へお参りしようというかねてからの願いはある。」とおっしゃったので、(滝口入道は言った。)「夢や幻のような現世はどうにでもなりましょう。長い来世の闇こそがつらくございますでしょう。」維盛はすぐに滝口入道を先導者として、お堂や塔を巡礼して、高野山の奥の院へと参りなさった。


高野山は都を離れること二百里。人里離れて、人の声もしない。緑の間を吹く風が木々を鳴らして、夕陽の光が穏やかである。八つの峰と、八つの谷は、本当に心も澄み渡るだろう。花の様子は、霧の立ちこめた林に美しく咲いていて、僧侶の鳴らす金剛鈴の音は山頂の雲に響いた。寺のかわらを松が覆って、垣根には苔がむしていて、

posted by manabiyah at 11:28| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする