「平家物語」各場面の原文朗読・現代語訳・解説の音声ファイルを公開しています。
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2013年07月31日

10分でわかる「平家物語」巻十「維盛出家」(とうとう維盛が出家をする)

↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
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繰り返し聴くこともできます。(ページ下に全訳あり。)


是等がかやうに先だつてなるを見給ふにつけても、いとど心ぼそうぞ思し召す。さてもあるべきならねば、「流転三界中、恩愛不能断、棄恩入無為、真実報恩者」と三返唱へ給ひて、遂にそりおろし給ひてンげり。「あはれ、かはらぬ姿を恋しき者共に今一度見えもし、見て後かくもならば、思ふ事あらじ」とのたまひけるこそ罪ふかけれ。


三位中将も、兵衛入道も同年にて、ことしは廿七歳なり。石童丸は十八にぞなりにける。舎人武里を召して、「おのれはとうとう是より八島へかへれ。都へはのぼるべからず。そのゆゑは、遂にはかくれあるまじけれども、まさしう此の有様を聞いては、やがてさまをもかへんずらむと覚ゆるぞ。八島へ参ッて人々に申さむずるやうはよな、「かつ御覧候ひしやうに、大方の世間もものうきやうにまかりなり候ひき。よろづあぢきなさもかずそひて見え候ひしかば、おのおのにもしられ参らせ候はで、かくなり候ひぬ。西国で左の中将うせ候ひぬ。一谷で備中守討たれ候ひぬ。われさへかくなり候ひぬれば、いかにおのおのたよりなう思し召され候はんずらむと、それのみこそ心ぐるしう思ひ参らせ候へ。抑唐皮といふ鎧、小烏といふ太刀は、平将軍貞盛より当家につたへて、維盛までは嫡々九代にあひあたる。若し不思議にて世もたちなほらば、六代にたぶべし」と申せ」とこそのたまひけれ。



平家物語連続講義のこれまでの内容を物語の展開順にまとめました。
「平家物語連続講義放送リスト」

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【アイテム紹介】
この本の中で、石母田正氏は「『重盛-維盛-六代』の系統の物語が、平家物語の骨格の全体ではないが、少くともその重要の一部」であるとして、「平氏の運命の予言者としての重盛の言葉が、典型的に実現されてゆく過程として、平家の作者は六代にいたる重盛の子孫をとくに浮彫したのではないか」と指摘しています。岩波新書青版「平家物語 」は平家物語成立の過程に対しての考察など、「平家物語」を読み解くためのエッセンスが凝縮された名著です。是非一読を。


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平家物語 (岩波新書)


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〈現代語訳〉


彼らがこのように自分に先立って出家するのを見なさって、維盛はますます心細くお思いになった。そのままでいるわけにもいかなかったので、「欲界色界無色界に流転していては 恩愛の情という煩悩を絶つことはできない 恩愛の情を捨てて無為の仏道に入れば 真の意味で恩愛に報いることができる」と三度唱えなさって、維盛はついに髪をそりおとしなさってしまった。「ああ、以前と変わらない姿を恋しい妻や子たちにもう一度見せて、彼らの姿をも見た後に、このように出家剃髪したなら思い残すこともないのに。」と、おっしゃったことは罪深い。


維盛中将も兵衛入道も同じ年齢で、今年は27歳である。石童丸(いしどうまる)は18歳になった。維盛は、舎人武里(とねりたけさと)をお呼びにになって、「お前ははやくここから屋島へ帰れ。都にのぼってはいけない。その理由は、最後まで隠す事はできないだろうが、まさに私のこの様子を妻が耳にしたら、すぐに尼となることだろうと思うのだ。屋島に参って人々に申し上げることは、『前々から皆様がご覧になっておりましたように、私はだいたい世間が嫌になってしまいました。いろいろと苦々しいことも加わって見えましたので、皆様に知られ申し上げないままで、こんなことになってしまいました。西国で清経が入水しました。一の谷の戦いで師盛が討たれました。私までも同じようなことになってしまったので、どんなに皆様が頼りなくお思いになっておりますだろうと、それだけは心苦しく思い申し上げております。そもそも唐皮(からかわ)という鎧や、小烏(こがらす)という刀は、平将門を討った平貞盛将軍から当家に伝わって、私維盛まで正統に受け継がれ9代目にあたる。もし思いがけずも世が立ち直ったなら、我が子六代に与えるがよい。』と申し上げよ。」とおっしゃった。


posted by manabiyah at 07:34| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする