「平家物語」各場面の原文朗読・現代語訳・解説の音声ファイルを公開しています。
全て無料でダウンロード可能です。
オススメの使い方は→こちらをご参照ください。

2013年08月26日

10分でわかる「平家物語」巻十「三日平氏その2」(維盛の妻子が悲嘆にくれる)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
再生ボタンをクリックして聴くことができます。(各回10分程度)
右端のDLボタンからダウンロードしてiPodなどに入れて、
繰り返し聴くこともできます。(ページ下に全訳あり。)


北の方「さていかにやいかに」と問ひ給へば、「『過ぎ候ひし三月十五日の暁、八島を御出で候ひて、高野へ参らせ給ひて候ひけるが、高野にて御ぐしおろし、それより熊野へ参らせおはしまし、後世の事をよくよく申させ給ひ、那智の奥にて御身をなげさせ給ひて候ふ』とこそ、御共申したりけるとねり武里はかたり申し候ひつれ」と申しければ、北の方「さればこそ。あやしと思ひつる物を」とて、引きかづいてぞふし給ふ。若君姫君も声々に泣きかなしみ給ひけり。


若君の御めのとの女房、泣々申しけるは、「是は今更おどろかせ給ふべからず。日来より思し召しまうけたる御事也。本三位中将殿のやうに生取にせられて、都へかへらせ給ひたらば、いかばかり心うかるべきに、高野にて御ぐしおろし、熊野へ参らせ給ひ、後世の事よくよく申させおはしまし、臨終正念にてうせさせ給ひける御事、歎のなかの御よろこびなり。されば御心やすき事にこそ思し召すべけれ。今はいかなる岩木のはざまにても、幼き人々をおほしたて参らせんと思し召せ」と、やうやうになぐさめ申しけれども、思し召ししのびて、永らふべしとも見え給はず。やがてさまをかへ、かたのごとくの仏事をいとなみ、後世をぞとぶらひ給ひける。



平家物語連続講義のこれまでの内容を物語の展開順にまとめました。
「平家物語連続講義放送リスト」
------------------------------------------------------------------------------------
【アイテム紹介】「平家物語」の入門書としては最強のわかりやすさだと思います。それもそのはず、著者の千明守氏は、代々木ゼミナール講師の椎名守。予備校講師としても一流の著者による解説です。文体は架空の生徒と先生のやりとりの形式になっていて、大変に読みやすい本です。イラストなども豊富に使われていて、読んでいて眠くなりません。「平家物語」の参考書を買うならば、1冊目に選ぶべき本はこの「平家物語が面白いほどわかる本」です!

書名or表紙画像↓をクリックすると詳細が表示されます。
平家物語が面白いほどわかる本



IMG_8184.JPG
------------------------------------------------------------------------------------

〈現代語訳〉


北の方が「それにしてもどうであったか」と問いなさると、(使いは)「『去る3月の15日の明け方に、維盛様は屋島をでなさって、高野山にお参りになりましたが、高野山で髪をおろして、それから熊野へ参りなさって、来世のことをよくよく申しなさってから、那智の沖で身を投げなさいました』とお供もうしあげた、舎人武里が語り申し上げました。」と申し上げたので、北の方は「やはり。奇妙だと思っていたのに。」と、衣をかぶって泣きくずれられた。若君や姫君も声々に泣き悲しみあいなさった。


若君のめのとの女房が、泣く泣く申したことには、「これは今改めて驚きなさるべきことではない。つねひごろ覚悟なさっていたことである。平重衡中将のように生け捕りにされて、都にお帰りになりなさったなら、どれほどにもつらいだろうが、高野山で髪をおろして、熊野へ参りなさって、来世のことをよくよく願い申し上げになり、臨終の際に安らかな思いでお亡くなりになったことは、嘆きの中でも歓びである。だから、心穏やかにお思いになるべきことでしょう。今はどんな岩や木のはざまのような環境でも、幼い人々をお育て申し上げようとお思いになってください。」と、めのとは北の方を様々に言ってなぐさめたが、北の方は思い忍びながらこのまま生きていけるようには、お見えにならなかった。すぐに尼となって、形式とおりに仏事をいとなんで、維盛の来世をとむらいなさった。

posted by manabiyah at 19:30| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする