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2013年09月03日

10分でわかる「平家物語」巻十「藤戸」(地元の者から海で馬で渡ることができる場所についての情報を得た佐々木三郎守綱)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
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繰り返し聴くこともできます。(ページ下に全訳あり。)


源氏「やすからぬ事也。いかがせん」といふところに、同じき廿五日の夜に入ッて、佐々木三郎守綱、浦の男をひとりかたらッて、しろい小袖・大口・白鞘巻などとらせ、すかしおほせて、「この海に馬にてわたしぬべきところやある」と問ひければ、男申しけるは、「浦の者どもおほう候へども、案内しッたるはまれに候ふ。此男こそよく存知して候へ。たとへば河の瀬のやうなる所の候ふが、月がしらには東に候ふ、月尻には西に候ふ。両方の瀬のあはひ、海のおもて十町ばかりは候ふらむ。この瀬は御馬にてはたやすうわたさせ給ふべし」と申しければ、佐々木なのめならず悦びで、わが家子郎等にもしらせず、かの男と只二人まぎれ出で、はだかになり、件の瀬のやうなる所を見るに、げにもいたく深うはなかりけり。膝・腰、肩に立つ所もあり。鬢のぬるる所もあり。深き所をば泳いで、あさき所に泳ぎつく。


男申しけるは、「これより南は北よりはるかに浅う候ふ。敵、矢さきをそろへて待つところに、裸にては叶はせ給ふまじ。かへらせ給へ」と申しければ、佐々木げにもとてかへりけるが、「下臈はどこともなき者なれば、又人にかたらはれて案内をもをしへむずらん。我ばかりこそ知らめ」と思ひて、彼男をさし殺し、頸かき切ッてすててンげり。



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【アイテム紹介】ここで無惨にも切られてしまった男の母が、後に戦いの功績により児島に領主として赴任した佐々木三郎に恨みを訴えるのが、謡曲「藤戸」です。

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観世流二十五世宗家観世元正監修 観世流謡曲名曲撰(10)藤戸

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〈現代語訳〉


源氏が「しゃくさわることだ、どうしよう」というところで、おなじく9月25日の夜になって、佐々木の三郎盛綱が、浦にいた男を仲間にひきいれて、白い小袖や大口や白ざやまきなどを与えて、いいくるめて、「この海で、馬で渡ることができるところがあるか。」と問うたところ、男が申したことには「浦の者は多くおりますが、細かい様子を知っているものはまれでございます。この私こそがよくわかっております。詳しくいえば川の瀬のような場所がございますが、月の始め頃は東にございます。月末には西にございます。両方の瀬の間は、海面十町ほどございますでしょう。この瀬は馬でなんともたやすく渡ることができなさるでしょう。」と申したので、佐々木は、なみなみでなく喜んで、自分の家来である家の子や郎等にも知らせないで、その男とただ二人でまぎれ出て、はだかになって、その瀬のようであるという所を見ると、本当にそれほど深くはなかった。膝や腰、肩くらいの高さで背が立つところもある。髪の濡れるくらいの所もある。深いところを泳いで、浅いところに泳ぎ着けた。


男が申したことには「ここから南は北よりもはるかに浅くございます。敵が矢先を揃えてかまえて待つところで、裸では具合が悪いこともおありでしょう。お帰りになってください。」と申したので、佐々木も「もっともだ」と思って帰ろうとしたが、「下郎は素性も判らず、誰につくかもわからないのであるので、別の者にいいくるめられたら、詳しい事情を教えるだろう。私だけがこの情報は知っていよう。」と思って、その男を刺し殺して、首をかき切って捨ててしまった。

posted by manabiyah at 17:47| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする