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2013年09月11日

10分でわかる「平家物語」巻十「藤戸その2」(馬で海を渡り先陣を駆けた佐々木の三郎守綱)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
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同じき廿六日の辰の剋ばかり、平家又小舟に乗ッて漕ぎいださせ、「ここを渡せ」とぞまねきける。佐々木三郎、案内はかねて知ッたり、しげめゆひの直垂に、黒糸威の鎧きて、白葦毛なる馬にのり、家子郎等七騎、ざッとうち入てわたしけり。大将軍参河守、「あれ制せよ、留めよ」とのたまへば、土肥次郎実平鞭鐙をあはせておッついて、「いかに佐々木殿、物のついてくるひ給ふか。大将軍のゆるされもなきに、狼籍なり。とどまり給へ」といひけれども、耳にも聞き入れずわたしければ、土肥次郎も制しかねて、やがてつれてぞわたいたる。馬のくさわき、むながいづくし、ふと腹につくところもあり、鞍つぼこす所もあり。ふかきところはおよがせ、あさきところにうちあがる。


大将軍参河守是をみて、「佐々木にたばかられけり。あさかりけるぞや。渡せや、渡せ」と下知せられければ、三万余騎の大勢みなうち入れてわたしけり。平家の方には「あはや」とて、舟どもおしうかべ、矢さきをそろへてさしつめひきつめ、さんざんに射る。源氏のつは物ども是を事共せず、甲のしころをかたむけ、平家の舟にのりうつりのりうつり、をめき叫んで攻めたたかふ。源平みだれあひ、或いは舟ふみしづめて死ぬる者もあり、或いは舟引ッ返されてあはてふためくものもあり。一日たたかひくらして夜に入りければ、平家の舟は奥にうかぶ。源氏は小島にうちあがッて、人馬のいきをぞやすめける。平家は八島へ漕しりぞく。源氏心はたけく思へども、船なかりければ、追うても攻めたたかはず。


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「平家物語連続講義放送リスト」

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〈現代語訳〉


同じく9月の26日の午前8時頃、平家はまた小舟で漕ぎ出させて「ここを渡ってみろ」と手招きした。佐々木三郎は、地形を前もって知っていた。しぼり染めのひたたれに、黒糸おどしの鎧を着て、葦毛に白みがかった毛並みの馬に乗り、家の子、郎等らの七騎とともにざっと海に馬を入れて渡った。大将軍、源範頼が「あれをとめろ、ひきとめよ」とおっしゃったので、土肥次郎実平は、鞭をうち・鐙を蹴って佐々木においついて、「どうした、佐々木殿、ものが取り憑いて狂いなさったか。大将軍のお許しものないのに、無法な行為である。やめなされ。」と言ったが、佐々木が耳にもいれず、馬を渡らせたので、土肥もとどめかねて、そのまま続いて海を渡った。馬の胸先、鞍の緒が当たる部分、馬の太腹あたりまで海面がとどくところもあり、鞍の中央部を越えるところもあった。深い部分は馬を泳がせて、浅いところにうち上がった。


大将軍参河守範頼はこれを見て、「佐々木にはかられた! 浅かったのだ、馬を渡らせろ、渡らせろ。」と命令なさったので、三万騎あまりの軍勢が、みな海に馬を入れて渡らせた。平家側では「ああ」と、舟を浮かべて、矢先を並べて、さんざんに矢を射る。源氏の軍勢はこれをものともせずに、甲のしころをかたむけて、平家の舟に次々とのりうつり、わめき叫んで攻め闘う。源平双方が乱れ合って、ある者は舟を踏んで沈ませてしまい死ぬ者もいる。あるいは舟を引っくり返されてしまい、慌てふためく者もいる。一日中闘いつづけて夜になって、平家の舟は沖にうかんでいる。源氏は小島にあがって、人や馬の息を休めている。平家は屋島へと舟を漕いで退却した。源氏は気持ちでは戦いに燃えていたが、舟がなかったので、追って攻めることはできなかった。

posted by manabiyah at 12:44| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする