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2013年09月16日

10分でわかる「平家物語」巻十「大嘗会之沙汰」(後鳥羽天皇即位の後、大嘗会が行われる)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
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都には大嘗会あるべしとて、御禊の行幸ありけり。節下は徳大寺左大将実定公、其比内大臣にておはしけるが、つとめられけり。おととし先帝の御禊の行幸には、平家の内大臣宗盛公節下にておはせしが、節下の幄屋につき、前に竜の旗たててゐ給ひたりし景気、冠ぎは、袖のかかり、表袴のすそまでもことにすぐれて見え給へり。其外一門の人々三位中将知盛・頭の中将重衡以下近衛づかさみつなに候はれしには、又立ならぶ人もなかりしぞかし。けふは九郎判官先陣に供奉す。木曾などには似ず、以外に京なれてありしかども、平家のなかのえりくづよりもなほおとれり。


同十一月十八日、大嘗会とげおこなはる。去る治承・養和の比より、諸国七道の人民百性等、源氏のためになやまされ、平家のためにほろぼされ、家かまどを捨て、山林にまじはり、春は東作の思ひを忘れ、秋は西収のいとなみにも及ばず。いかにしてか様の大礼もおこなはるべきなれども、さてしもあるべき事ならねば、かたのごとくぞ遂げられける。

参河守範頼、やがて続いて攻め給はば、平家はほろぶべかりしに、室・高砂にやすらひて、遊君遊女どもめし集め、あそびたはぶれてのみ月日を送られけり。東国の大名小名、多しといへども、大将軍の下知にしたがふ事なれば力及ばず。只国のつひえ、民のわづらひのみあッて、ことしもすでに暮れにけり。




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【アイテム紹介】「創られた国民的叙事詩」というのは面白い視点。「平家物語」は国民的な文学であり叙事詩である、という一般常識はいかにして成立したかについて、客観的・学術的に分析がされています。「平家物語」の受容のされ方を通じて、明治以降、近代日本の文学が何を求めて、何を価値として来たのかも、透けて見えて来ます。ちなみに、この本は早稲田大学辺りの入試問題(文化構想学部とか)で「現古融合問題」「文語文融合問題」等の形で、出題がありそうな予感がします。
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〈現代語訳〉


都では大嘗会を行うとして、それに先立つみそぎのために天皇のお出ましがあった。節下(せつげ)の役は徳大寺左大将実定公という、その頃内大臣であった方がつとめなさった。おととし先帝安徳天皇のみそぎのためのお出ましには、平家の内大臣宗盛公が、せつげでいらっしゃったが、せつげのための仮小屋について、前に龍の旗をたてて座っていなさったご様子、冠のかぶりぐあい、袖の様子、はかまの長く引いたすそまでも特にすばらしく見えなさっていた。それ以外の一門の人々では、三位の中将知盛や、頭の中将であった重衡以下、近衛の司にいたものが、綱を取る役をつとめ申し上げた時には、また、平家にならぶ人もいなかったよ。今日は九郎判官義経が先頭に立ってとしてお供申し上げる。義仲とは違って、たいへん京には慣れていたが、平家の中の残りくずよりもやはり劣っていた。


同じ年の11月18日、大嘗会が行われた。かつての治承や養和の時代から、諸国や七道の人々や百姓たちは、源氏のために悩まされたり、平家のために滅ぼされたりして、家やかまどを捨てて山林に入って、春には耕作をして、秋には収穫をするという営みもしない。「どうしてこのような大掛かりな儀式が行われるべきだろうか」と思われるが、やらないわけにはいかないので、形式通りに行われた。


参河守範頼がそのまま続けて攻めなさったなら、平家は滅びるはずだったのに、範頼は、室津や高砂の地にとどまって、遊女たちを呼び集めて、遊びたわむれてばかりして月日を過ごされた。東国の大名や小名が多かったといっても、大将軍の命令に従うべきことなのでどうしようもない。ただ、国費が無駄に費やされ、民の苦しみばかりがあって、今年もすでに暮れてしまった。

posted by manabiyah at 08:07| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする