「平家物語」各場面の原文朗読・現代語訳・解説の音声ファイルを公開しています。
全て無料でダウンロード可能です。
オススメの使い方は→こちらをご参照ください。

2013年09月20日

10分でわかる「平家物語」巻十一「逆櫓」(義経と梶原景時、船の櫓を巡って意見対立)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
再生ボタンをクリックして聴くことができます。(各回10分程度)
右端のDLボタンからダウンロードしてiPodなどに入れて、
繰り返し聴くこともできます。(ページ下に全訳あり。)


梶原申しけるは、「今度の合戦には、舟に逆櫓をたて候はばや」。判官「さかろとはなんぞ」。梶原「馬はかけんと思へば弓手へも馬手へもまはしやすし。舟はきッとおしもどすが大事に候ふ。艫舳に櫓をたてちがへ、わいかぢをいれて、どなたへも、やすうおすやうにし候はばや」と申しければ、判官のたまひけるは、「いくさといふ物はひとひきもひかじと思ふだにも、あはひあしければ引くはつねの習なり。もとよりにげまうけしてはなんのよかるべきぞ。まづ門出のあしさよ。さかろをたてうとも、かへさまろをたてうとも、殿原の舟には百梃千梃もたて給へ。義経はもとの櫓で候はん」とのたまへば、


梶原申しけるは、「よき大将軍と申すは、かくべき処をばかけ、ひくべき処をばひいて、身をまッたうしてかたきをほろぼすをもッてよき大将軍とはする候。片趣なるをば、猪のしし武者とてよきにはせず」と申せば、判官「猪のしし、鹿のししは知らず、いくさはただ平攻めにせめて、かッたるぞ心地はよき」とのたまへば、侍共、梶原に恐れて高くは笑はねども、目ひき、鼻ひき、ぎぎめきあへり。判官と梶原と、すでに同士軍あるべしとざざめきあへり。



平家物語連続講義のこれまでの内容を物語の展開順にまとめました。
「平家物語連続講義放送リスト」


------------------------------------------------------------------------------------
【アイテム紹介】「平家物語」を覚一本の原典そのままに、各界の第一人者による朗読・演技・演奏で見て聴かせようという、前代未聞のDVDシリーズです。

タイトルor画像↓をクリックすると詳細が表示されます。
DVD 原典 平家物語 巻第十一[4105-11]

逆櫓──茂山宗彦
嗣信最期──山寺宏一
那須与一・弓流──市村正親
鶏合壇浦合戦・遠矢──岡本健一
先帝身投──島田正吾
能登殿最期──野村萬斎
内侍所都入──宮崎美子
文之沙汰・副将被斬・大臣殿被斬──緒川たまき
腰越──茂山正邦・茂山茂
重衡被斬──片岡愛之助
------------------------------------------------------------------------------------

〈現代語訳〉


梶原景時が申したことには、「今回の戦いでは逆櫓をたてたいと思っております。」義経は言った。「逆櫓とは何か。」と。梶原景時が答えた。「馬はかけようと思えば、右にも、左にも向くことはたやすい。だが、船はすぐに押し戻すことは大変なことです。船の後方と前方に櫓を逆方向につけて、左右にも櫓をつけて、どちらの方へも、簡単に進むようにしたいと思います。」と申したので、義経がおっしゃったことには「戦いというものは、一時もひくまいと思う時でさえ、形勢が悪ければ引くのは常の習慣である。もとから、逃げる準備をして、何が良いだろう。良くない。門出なのに不吉なことだよ。逆櫓をたてようとも、かえさま櫓をたてるとしても、梶原どの達の舟に百個でも千個でもつけなされ。私、義経は、もとの櫓でかまいません。」とおっしゃったので、


梶原が申したことには「立派な大将軍と申すものは、攻めるべきところを攻めて、引くべきところを引いて、我が身を無事に保って、敵を滅ぼすものをもって、立派な大将軍というのです。一方に偏っている者をイノシシ武者といって立派とはしない。」と申したので、義経は言った。「いのししだろうが、鹿だろうが知らないが、戦いはただひたすら攻めて、勝っているのが心地よいのだ。」とおっしゃったので、さむらいたちは、梶原を恐れて大きい声では笑わなかったが、目配せをして、鼻先で合図をして、ざわめきあっている。「義経様と梶原はいまにも味方同士で闘うことになるだろう」と、がやがや言いあった。

posted by manabiyah at 13:00| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする