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2013年10月22日

10分でわかる「平家物語」巻十一「嗣信最期」(源氏と平家が繰り広げた「源平口合戦」)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
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繰り返し聴くこともできます。(ページ下に全訳あり。)


越中次郎兵衛盛嗣、舟のおもてに立ちいで、大音声をあげて申しけるは、「名のられつるとは聞きつれども、海上はるかにへだたて、その仮名実名分明ならず。けふの源氏の大将軍は誰人でおはしますぞ」。伊勢三郎義盛あゆませ出でて申しけるは、「こともおろかや、清和天皇十代の御末、鎌倉殿の御弟、九郎大夫判官殿ぞかし」。盛嗣「さる事あり。一年平治の合戦に、父討たれてみなし子にてありしが、鞍馬の児して、後にはこがね商人の所従になり、粮料せおうて奥州へ落ちまどひし小冠者が事か」とぞ申したる。


義盛「舌のやはらかなるままに、君の御事な申しそ。さてわ人どもは砥浪山のいくさにおひおとされ、からき命いきて北陸道にさまよひ、乞食して泣く泣く京へのぼりたりし者か」とぞ申しける。盛嗣かさねて申しけるは、「君の御恩にあきみちて、なんの不足にか乞食をばすべき。さいふわ人共こそ、伊勢の鈴鹿山にて山だちして、妻子をもやしなひ、わが身も過ぐるとはききしか」といひければ、金子の十郎家忠「無益の殿原の雑言かな。われも人もそらごと言ひ付けて雑言せんには、誰かはおとるべき。去年の春、一の谷で、武蔵・相模の若殿原の手なみの程は見てん物を」と申す処におととの与一そばにありけるが、いはせもはてず、十二束二伏、よッぴいてひやうどはなつ。盛嗣が鎧のむないたに、うらかく程にぞたたりける。其後は互に詞だたかひとまりにけり。


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〈現代語訳〉


越中次郎兵衛盛嗣(えっちゅうのじろうびょうえもりつぐ)が、船の正面に立ってでて、大声をあげて申したことには「名乗られたとは聞いたが、海上はるかに遠く、その呼び名、本名ともにはっきりわからない。今日の源氏軍の大将は、どなたでいらっしゃるか。」伊勢の三郎義盛が歩みでて申したことには「言うまでもないことだ。清和天皇十代の子孫、頼朝殿の弟である九郎判官義経様であるよ。」盛嗣が言った。「聞いたことがある。以前に平治の乱で、父が討たれてみなしごであったのだが、鞍馬寺の稚児となって、後に金商人の家来になって、食料を背負って奥州へ落ち延びた小冠者のことか。」と申した。


義盛は言った。「舌がよく回るのにまかせて、主君のことをあれこれ申すな。それにしても、あなたは以前に倶利伽羅峠の戦で追い落とされて、命からがら生き延びて、北陸道をさまよって、物乞いしながら泣く泣く京へとのぼった者か。」と申した。盛嗣が重ねて申したことには「君からのご恩を充分に受けて、何が足りなくて物乞いなどするべきか、いやしない。そういうお前らこそ、伊勢の鈴鹿山で山賊をして、妻子を養って、自分も暮らしていると聞いたぞ。」と言ったので、金子の十郎家忠が言った。「無駄な殿方同士の悪口だな。自分も相手も、作り事まで言いつけて悪口するなら、どちらも負けにならないだろう。去年の春に、平家は一の谷で、武蔵や相模の若い武者たちのお手並みは見ているだろうに。」と申すところに、金子の弟の与一がそばにいたが、家忠が言い終わらぬうちに、十二束二伏の矢を、よく引いて、ひゅっと放った。盛嗣の鎧の胸板に、裏まで通るほどにその矢はささった。その後は、互いにことばでの戦いは終わってしまった。

posted by manabiyah at 12:49| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする