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2013年10月26日

10分でわかる「平家物語」巻十一「嗣信最期」その2(義経を守ろうとして敵の矢面に立った佐藤三郎兵衛嗣信)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
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繰り返し聴くこともできます。(ページ下に全訳あり。)


判官は佐藤三郎兵衛を陣のうしろへかき入れさせ、馬よりおり、手をとらへて、「三郎兵衛、いかがおぼゆる」とのたまへば、息のしたに申しけるは、「いまはかうと存じ候ふ」。


「思ひ置く事はなきか」とのたまへば、「なに事をか思ひ置き候ふべき。君の御世にわたらせ給はんを見参らせで、死に候はん事こそ口惜しう覚え候へ。さ候はでは、弓矢とる者の、敵の矢にあたッてしなん事、もとより期する処で候ふなり。就中に『源平の御合戦に、奥州の佐藤三郎兵衛嗣信といひける者、讃岐国八島のいそにて、主の御命にかはり奉ッて討たれにけり』と、末代の物語に申されむ事こそ、弓矢とる身には今生の面目、冥途の思出にて候へ」と申しもあへず、ただよわりによわりにければ、判官涙をはらはらとながし、「此辺にたッとき僧やある」とて、たづねいだし、「手負のただいまおちいるに、一日経かいてとぶらへ」とて、黒き馬のふとうたくましいに、きぶくりんの鞍おいて、かの僧にたびにけり。


判官五位尉になられし時、五位になして、大夫黒とよばれし馬なり。一の谷の鵯越をもこの馬にてぞ落されたりける。弟の四郎兵衛をはじめとして、これを見る兵者ども、みな涙をながし、「此君の御ために命をうしなはん事、まッたく露塵程も惜しからず」とぞ申しける。



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〈現代語訳〉


判官義経は佐藤嗣信を陣の後方へと、かつぎ入れさせて、馬から下りて手をとらえて、「三郎兵衛よ、どのような心地か。」とおっしゃったので、(嗣信は)「もはやこれまでだと存じます。」(と答えた。)


「思い残すことはないか」と義経がおっしゃったので、(嗣信は)「何を思い残すことがございますでしょう。義経様が世の中で栄えなさるのを見申し上げないままに、死にますことだけが残念でございます。それを除きましては、武士である者が、敵の矢にあたって死ぬようなことは、もとから覚悟しているところです。とりわけて『源平の合戦で、奥州の佐藤三郎兵衛嗣信といった者が、讃岐の国、屋島の磯で主人の命に代わり申し上げて討たれてしまった』と、末代の語りぐさとして言われるような事は、武士にとってこの世での面目であり、冥土への思い出でございます。」と、嗣信は最後まで申し上げきることもできずに、ただ弱りに弱ってしまったので、義経判官ははらはらと涙を流して「この辺りに尊い僧はいるか」といって探し出して、「負傷した者がただ今息を引き取ろうとしているので、一日経を書いて弔ってくれ」といって、黒く太くたくましい馬に、金でふちどりした鞍をおいて、その僧にお与えになった。


判官が五位のじょうとなった時に、馬にも五位の位を与えて、大夫黒(たいふぐろ)と呼ばれた馬である。一の谷の鵯越でも、この馬で坂おとしをされたのだった。弟の四郎兵衛忠信をはじめとして、これを見る武士たちは皆なみだを流して、この君のために命を失うようなことは、全くわずかばかりも惜しくないと申した。

posted by manabiyah at 09:34| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする