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2013年11月11日

10分でわかる「平家物語」巻十一「那須与一その2」(射ることの困難さを感じ、辞退したいとの旨を述べた那須与一)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
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与一其比は廿ばかりの男子なり。かちに、赤地の錦をもッておほくび、はた袖いろへたる直垂に、萌黄縅の鎧着て、足白の太刀をはき、切斑の矢の、其日のいくさ射て少々のこッたりけるを、かしらだかにおひなし、薄切斑に鷹の羽はぎまぜたるぬた目の鏑をぞさしそへたる。滋籐の弓脇にはさみ、甲をばぬぎたかひもにかけ、判官の前に畏る。

「いかに宗高、あの扇のまンなか射て、平家に見物せさせよかし」。与一畏て申けるは、「射おほせ候はむ事、不定に候ふ。射損じ候ひなば、ながきみかたの御きずにて候ふべし。一定つかまつらんずる仁に仰せ付らるべうや候ふらん」と申す。判官大きにいかッて、「鎌倉をたッて西国へおもむかん殿原は、義経が命をそむくべからず。少しも子細を存ぜん人は、とうとう是よりかへらるべし」とぞのたまひける。

与一かさねて辞せばあしかりなんとや思ひけん、「はづれんは知り候はず、御定で候へば、つかまッてこそみ候はめ」とて、御まへを罷り立ち、黒き馬の太うたくましいに、小ぶさの鞦かけ、まろぼやすッたる鞍おいてぞ乗ッたりける。弓とりなほし、手綱かいくり、みぎはへむひて歩ませければ、みかたの兵共うしろをはるかに見おくッて、「この若者一定つかまつり候ひぬと覚え候ふ」と申しければ、判官もたのもしげにぞ見給ひける。



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平家物語図典


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〈現代語訳〉


与一はその時、20歳のほどの男である。赤地の錦で、おくみや、袖の端をいろどった直垂を着て、萌黄色の糸でおどした鎧を着て、さやの金具が銀色の太刀をさして、きりうの矢で、その日のいくさで使って少し残っていた矢を、頭より少し高く出るように背負って、うすぎりうに鷹の羽をまぜた鹿の角で作った鏑矢をさしそえている。しげどうの弓を脇にはさんで、かぶとを脱いでたかひもにかけて、義経の前にかしこまった。


(義経)「どうだ、那須与一むねたかよ、あの扇の真ん中を射って、平家に見物させよ。」与一がかしこまって申したことには「射通せるかどうかということは、不確かでございます。もし射損じてしまいましたら、源氏方の長い汚名、傷でございましょう。必ず射通すことできるお方に、ご命令なさるべきでございましょう」と申した。義経は大いに怒って「鎌倉をたって西国へむかおうとする者達は、私、義経の命令にそむいてはならない。少しでも細かいことを言う者は、はやくはやくここから帰られるがよい。」とおっしゃった。


与一は再び辞退することは悪いだろうと思ったのであろうか、「外れるかどうかはわかりませんが、ご命令でございますので、やってみしょう。」と与一は義経の前を退いてたち、黒い馬で太くたくましい馬に、短い房のついた、馬の尾から鞍にわたす組紐をかけて、丸い模様ににしたほやをすりこんだ鞍をつけて馬にのった。弓を持ち直して、手綱をあやつり、水際にむかって馬を歩ませたので、源氏方の侍たちは、後ろから遠く見送って「この若者はきっとやりとげるでしょうとおもいます」と申したので、義経は頼もしそうに見なさった。

posted by manabiyah at 13:51| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする