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2013年11月22日

10分でわかる「平家物語」巻十一「弓流」(弓を落としてしまった義経が、必死になってその弓を拾おうとする)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
再生ボタンをクリックして聴くことができます。(各回10分程度)
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繰り返し聴くこともできます。(ページ下に全訳あり。)


判官これを見て、「やすからぬ事なり」とて、後藤兵衛父子、金子兄弟をさきにたて、奥州の佐藤四郎兵衛・伊勢三郎を弓手馬手にたて、田代の冠者をうしろにたてて、八十余騎おめいてかけ給へば、平家の兵物ども馬にはのらず、大略かち武者にてありければ、馬にあてられじとひきしりぞひて、みな舟へぞのりにける。楯は算を散らしたる様にさむざむに蹴ちらさる。源氏の兵者ども、勝に乗ッて、馬のふと腹ひたる程にうちいれてせめたたかふ。


判官ふか入りしてたたかふほどに、舟のうちより熊手をもッて、判官の甲のしころにからりからりと二三度までうちかけけるを、みかたの兵ども、太刀長刀でうちのけうちのけしける程に、いかがしたりけむ、判官弓をかけおとされぬ。うつぶして鞭をもッてかきよせて、とらうとらうどし給へば、兵共「ただすてさせ給へ」と申しけれども、つひにとッて、わらうてぞかへられける。


おとなどもつまはじきをして、「口惜き御事候かな、たとひ千疋万疋にかへさせ給べき御だらしなりとも、いかでか御命にかへさせ給べき」と申せば、判官「弓の惜しさに取らばこそ。義経が弓といはば、二人してもはり、もしは三人してもはり、叔父の為朝が弓の様ならば、わざともおとしてとらすべし。わう弱たる弓をかたきのとりもッて、「これこそ源氏の大将九郎義経が弓よ」とて、嘲哢せんずるが口惜ければ、命にかへてとるぞかし」と宣へば、みな人これを感じける。


平家物語連続講義のこれまでの内容を物語の展開順にまとめました。
「平家物語連続講義放送リスト」
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〈現代語訳〉


判官義経はこれをみて「こしゃくなことだ」といって、後藤兵衛親子と金子兄弟を先にいかせて、奥州の佐藤四郎兵衛・伊勢三郎を左右にたて、田代の冠者を後方に配置して、80騎あまりでわめき叫んで馬でかけなさったので、平家の武者達は馬には乗っておらず多くが徒歩の武者であったので、馬に体当たりされないようにと退却して、みな舟に乗ってしまった。楯は算木を散らかしたように、さんざんに蹴散らされた。源氏の武者達は。勝ちの空気に乗じて、馬のふとはらが、ひたるくらいに馬を海にかけいれて攻め闘う。


義経が深入りして戦っているうちに、平家側が舟の中から熊手をつかって、義経の甲の横の部分に、からりからりと2、3度引っ掛けてきたので、源氏方の武士達が、太刀や長刀で、それを払いのけようとしていた時、どうしたことであったろうか、義経判官は弓を海に落とされた。義経は横になって、ムチでもってかき寄せて、落とした弓をとろうとろうとしなさったので、源氏の武者たちが「弓はお捨てくだされ」と申したが、義経はとうとう弓を拾って、笑って戻られた。


老武者たちがつまはじき(=非難の動作)をして言った。「もったいないことでございますなあ。たとえ千びき、万びきの値段になりなさる高級な弓であるとしても、どうして命にかえなさるべきだろうか。」と申したので、義経は言った。「仮に弓惜しさに拾おうとしたなら、その通りだが、そうではない。大将である義経の弓であれば、二人でもって張ったり、あるいは三人で張るくらい強いのが理想的だ。もし叔父為朝のような弓であれば、わざと落として相手に拾わせるだろう。もし実際の私の弓のように弱い弓を敵が拾って、『これほど弱い弓が源氏の大将である義経の弓か』と、あざ笑われることが悔しいので、命にかえても拾ったのだ。」とおっしゃったので、みなが心を打たれた。

posted by manabiyah at 17:23| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする