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2013年12月07日

10分でわかる「平家物語」巻十一「鶏合壇浦合戦」その2(平知盛が侍たちに覚悟を呼びかける言葉を語る)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
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さる程に、源平の陣のあはひ、海のおもて卅余町をぞへだてたる。門司・赤間・壇の浦はたぎりておつる塩なれば、源氏の舟は塩にむかうて、心ならずおしおとさる。平家の舟は塩におうてぞ出で来たる。おきは塩のはやければ、みぎはについて、梶原敵の舟のゆきちがふ処に熊手をうちかけて、親子主従十四五人乗りうつり、打物ぬいて、艫舳にさむざむにないでまはる。分どりあまたして、其日の高名の一の筆にぞつきにける。すでに源平両方陣を合はせて時をつくる。上は梵天までもきこえ、下は海竜神もおどろくらんとぞおぼえける。

新中納言知盛卿舟の屋形にたちいで、大音声をあげてのたまひけるは、「いくさは今日ぞかぎる。物ども、すこしもしりぞく心あるべからず。天竺・震旦にも日本我朝にもならびなき名将勇士といへども、運命つきぬれば力及ばず。されども名こそ惜しけれ。東国の者共によはげ見ゆな。いつのために命をば惜しむべき。これのみぞ思ふ事」とのたまへば、飛騨三郎左衛門景経御まへに候ひけるが、「これうけ承れ、侍ども」とぞ下知しける。上総悪七兵衛すすみ出て申しけるは、「坂東武者は馬の上でこそ口はきき候ふとも、舟軍にはいつ調練し候ふべき。魚の木にのぼッたるでこそ候はんずれ。一々にとッて海につけ候はん」とぞ申したる。越中次郎兵衛申しけるは、「おなじくは大将軍の源九郎にくん給へ。九郎は色白うせいちいさきが、むかばのことにさしいでてしるかんなるぞ。ただし直垂と鎧をつねに着かふなれば、きと見わけがたかんなり」とぞ申しける。上総悪七兵衛申しけるは、「心こそたけくとも、その小冠者、なに程の事かあるべき。片脇にはさんで、海へ入れなんものを」とぞ申したる。

平家物語連続講義のこれまでの内容を物語の展開順にまとめました。
「平家物語連続講義放送リスト」
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〈現代語訳〉


さて、源平の陣のあいだは、海上3、3キロほどへだてていた。門司(もじ)・赤間(あかま)・壇の浦は、逆巻いて流れる潮であるので、源氏の舟は潮の流れに逆らう方向になって押し流される。平家の舟は潮の流れに乗って進みでてきた。沖は潮の流れが早いので、海岸に沿って、梶原景時は、敵の舟とすれ違うところで熊手をひっかけて、親子主従が十四五人平家側の舟に乗り移って、刀を抜いて、船尾から船主にかけて、さんざん切って回る。敵の首をたくさんとって、その日の軍功の記録の第一番に、名を書き付けられた。すでに源平両方が陣を向かい合わせてときの声をあげた。その声は、上は梵天までも響き、下は海竜神も驚いているだろうと思われた。


新中納言平知盛は、舟の屋形に立ち出て大声をあげておっしゃったことには「いくさは今日で終わる。者どもよ。少しもしりぞく心があってはいけない。インド、中国にも、我が国日本にも、並びない名将や勇士であっても、運命が尽きてしまえば力はおよばない。しかし名は惜しむことだ。東国の武者達に弱みを見せるな。今日をおいて、いつのために命を惜しむべきか、私が思うのはこれだけだ。」とおっしゃると、飛騨の三郎左衛門景経は、知盛の前にひかえていたが、「これをうけたまわれ。侍達よ!」と知盛の言葉を、おおせくだした。上総の悪七兵衛が進み出て申したことには、「関東の武者達は、馬上では大きな口をききますが、舟での戦いはいつ訓練しておるでしょうか。魚が木にのぼったようなものでございましょう。いちいちつかまえて海につけてやりましょう。」越中の次郎兵衛が申したことには「同じ事なら大将軍である九郎義経と組み合いなされ。九郎義経は白くて背が小さく、前歯が特に出て目立っているそうだぞ。ただし直垂と鎧をつねに着替えるそうなので、すぐには見分けづらいようだ。」と申した。上総の悪七兵衛が答えていったことには「気ばかり強くあってもその若僧、なにほどのこともあるまい。片脇にはさんで海へと入れてやろう。」と申した。

posted by manabiyah at 08:57| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする