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2010年09月03日

10分でわかる「平家物語」巻一「殿上闇討」(忠盛が殿上人となり、周囲からのねたみによる闇討ちを逃れる場面)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
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忠盛是を伝へ聞いて、「われ右筆の身にあらず、武勇の家に生れて、今不慮の恥にあはむ事、家の為、身の為、こころうかるべし。せむずるところ、身を全して君に仕ふといふ本文あり」とて、兼て用意をいたす。


参内のはじめより、大なる鞘巻を用意して、束帯のしたにしどけなげにさし、火のほのぐらき方にむかて、やはら此の刀をぬき出し、鬢にひきあてられけるが、氷などの様にぞみえける。諸人目をすましけり。


其上忠盛の郎等、もとは一門たりし、木工助平貞光が孫、しんの三郎大夫家房が子、左兵衛尉家貞といふ者ありけり。薄青のかりぎぬのしたに萠黄威の腹巻をき、弦袋つけたる太刀脇ばさむで、殿上の小庭に畏てぞ候ける。


貫首以下あやしみをなし、「うつほ柱よりうち、鈴の綱のへんに、布衣の者の候ふはなにものぞ。狼籍なり。罷り出よ」と六位をもていはせければ、家貞申けるは、「相伝の主、備前守殿、今夜闇打にせられ給ふべき由承り候ふあひだ、其のならむ様を見むとて、かくて候ふ。えこそ罷り出づまじけれ」とて、畏て候ければ、是等をよしなしとやおもはれけん、其夜の闇うちなかりけり。


平家物語連続講義のこれまでの内容を物語の展開順にまとめました。
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〈現代語訳〉


忠盛はこの闇討ちの噂を聞いて、「私は文筆で身を立てているものではなく、武士の家に生まれて、今、不本意な恥をかかせられる事は、家のためにも、我が身のためにも、情けないであろう。“するところはただ、我が身を万全にして君に仕えることだ” という金言もある」と言って前もって準備をする。


宮中に参内する最初から、大きめの短刀を準備して、束帯の下にだらしない感じに挿し、火のやや暗い方に向かって、そっとその短刀を抜き出して、頭の側面の髪に当てなさったのが、まるで氷のように見えた。人々は目を見張った。


その上、忠盛の家来で、もとは平家一門だった木工助平貞光の孫で、しんの三郎大夫家房の子である、左兵衛尉家貞といふ者がいた。家貞は薄い青色の狩衣の下に、もえぎおどしの腹巻を着て、弦袋をつけた太刀を脇にはさんで、殿上の小庭にかしこまってひかえていた。


蔵人頭以下の人々は怪しんで「雨樋のうつほ柱の内側、鈴の綱近くに、布衣を来た身分の低い者がありますのは、何ものだ。無礼だ。出て行け」と六位の蔵人を介して言わせたところ、家貞が申したことには「代々御仕えしている主人である備前のかみである忠盛様が、今夜闇討ちにされなさるという旨を承ったのでその有様を見ようと思ってこのように控えております。出て行くことはできません」とかしこまって控えているので、これではどうしようも無いとお思いになったのだろうか、その夜の闇討ちは無かった。

posted by manabiyah at 00:00| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする