「平家物語」各場面の原文朗読・現代語訳・解説の音声ファイルを公開しています。
全て無料でダウンロード可能です。
オススメの使い方は→こちらをご参照ください。

2010年10月07日

10分でわかる「平家物語」巻一「祇王」(仏御前を慰めよと命じられた祇王が、今様を歌う場面)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
再生ボタンをクリックして聴くことができます。(各回10分程度)
右端のDLボタンからダウンロードしてiPodなどに入れて、
繰り返し聴くこともできます。(ページ下に全訳あり。)


独り参らむは余りに物うしとて、いもうとの祇女をもあひぐしけり。其外白拍子二人、そうじて四人、ひとつ車にとりのつて、西八条へぞ参りたる。さきざきめされける所へは、いれられず、遥にさがりたる所に座敷しつらふてをかれたり。


祇王「こはさればなに事さぶらふぞや。わが身にあやまつ事はなけれ共、捨てられたてまつるだにあるに、座敷をさへさげらるることの心うさよ。いかにせむ」と思ふに、知らせじとおさふる袖のひまよりも、あまりて涙ぞこぼれける。仏御前是をみて、あまりにあはれにおもひければ、「あれはいかに、日ごろめされぬところでもさぶらはばこそ、是へめされさぶらへかし。さらずはわらはにいとまをたべ。出て見参せん」と申ければ、入道「すべて其儀あるまじ」とのたまふ間、力及ばで出ざりけり。


其後入道、祇王が心のうちをばしり給はず、「いかに、其後何事かある。さては仏御前があまりにつれづれげに見ゆるに、今様ひとつうたへかし」と、のたまへば、祇王、まいる程では、ともかうも入道殿の仰せをば背くまじと思ひければ、落つるなみだをおさへて、今様ひとつぞうたうたる。


仏もむかしは凡夫なり 我等も終には仏なり いづれも仏性具せる身を、へだつるのみこそかなしけれ




平家物語連続講義のこれまでの内容を物語の展開順にまとめました。
「平家物語連続講義放送リスト」

------------------------------------------------------------------------------------
【アイテム紹介】「平家物語」には数多くの異本(バージョン違い)がありますが、新潮社からは「百二十句本」が出版されています。例えば、この「祇王」の場面でも、祇王(百二十句本では義王)が歌う今様「仏もむかしは〜」の前に百二十句本では「月もかたぶき夜もふけて 心のおくをたづぬれば」というフレーズが置かれています。同じ場面を異本で読み比べるというのも、「平家物語」の楽しみ方の一つです。

タイトルor画像↓をクリックすると詳細が表示されます。
平家物語(百二十句本) 上

平家物語(百二十句本) 中

平家物語(百二十句本) 下

------------------------------------------------------------------------------------

〈現代語訳〉


一人で参るのは、余りに心苦しいということで、祇王は妹の祇女をともに連れていった。そのほかの白拍子も二人、合わせて四人がひとつの車に乗って、西八条へ参った。以前に召されていた場所へは、入れてもらえず、はるかに下がったところに、座敷をしつらえて座らせられた。


祇王は「これは何事でございますでしょうか。私自身に過失がないのに、捨てられ申し上げたことでさえひどいことであるのに、座敷をまでも下げられることの情けないことよ。どうしよう。」と、知られまいと抑える袖の隙間から、あふれる涙がこぼれた。仏御前はこのような祇王の様子をみて、あまりにも不憫に思われたので「これはいったいどうしたことですか。もし仮に、日頃はおよびにならないところでもございますなら、ともかく、この場所はこれまで祇王さまをおよびになっていた場所ですよ。こちらの方に呼んでくださいよ。そうでないならば、私に暇を出してください。私がここを出て祇王さまに会いに伺いましょう。」清盛が、「全くその必要はない」とおっしゃったので、仏御前は力およばず出ていくこともできなかった。


その後、清盛は、祇王の心中を察しなさることもなく、「どうした祇王、あれから何事かあったか? それでは、仏御前が、あまにに所在無さそうにしているので、祇王よ、お前が今様をひとつ歌って仏御前を慰めよ。」祇王は参る時には「ともかく清盛の命令には背くまい」と思っていたので、落ちる涙をこらえて、今様をひとつ歌った。


「仏も昔は平凡な人間であった
 そして我々も最後には仏となる身である
 どちらも仏となるための仏性を持っている身であるが
 隔てられているばかりであるのが悲しいことだ」

posted by manabiyah at 00:00| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする