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2010年10月14日

10分でわかる「平家物語」巻一「祇王その2」(権力者、平清盛に翻弄された白拍子であった女性たち)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
再生ボタンをクリックして聴くことができます。(各回10分程度)
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繰り返し聴くこともできます。(ページ下に全訳あり。)


かくて春すぎ夏闌けぬ。秋の初風吹きぬれば、星合の空をながめつつ、あまのとわたるかぢの葉に、おもふ事書く頃なれや。夕日のかげの西の山の端に、隠るるを見ても、「日の入り給ふ所は西方浄土にてあんなり、いつかわれらもかしこに生れて、物をおもはですぐさむずらん」と、かかるにつけても過ぎにしかたのうき事ども、おもひつづけて、唯つきせぬ物は涙なり。


たそかれ時も過ぎぬれば、竹のあみ戸をとぢふさぎ、灯かすかにかきたてて、親子三人念仏してゐたる処に、竹のあみ戸を、ほとほととうちたたくもの出来たり。


其時、尼ども肝を消し、「あはれ、是はいふかひなき我等が、念仏して居たるを妨げんとて、魔縁の来たるにてぞあるらむ。昼だにも人もとひこぬ山里の、柴の庵の内なれば、夜ふけて誰かは尋ぬべき。わづかの竹のあみ戸なれば、あけずともおしやぶらん事やすかるべし。中々ただあけていれんとおもふなり。それに情をかけずして、命をうしなふものならば、年比頼みたてまつる弥陀の本願をつよく信じて、ひまなく名号をとなへ奉るべし。声を尋ねてむかへ給ふなる聖主の来迎にてましませば、などかいんぜうなかるべき。相かまへて念仏おこたり給ふな」と、たがひに心をいましめて、竹のあみ戸をあけたれば、魔縁にてはなかりけり。


仏御前ぞ出来たる。


平家物語連続講義のこれまでの内容を物語の展開順にまとめました。
「平家物語連続講義放送リスト」

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〈現代語訳〉


こうして春が過ぎて、夏も盛りを過ぎた。秋の始めの風が吹いたので、牽牛と織姫が出会うという七夕の空を眺めながら、天の川を渡る舟の「舵(かじ)」ではないが、「梶(かじ)」の葉に願い事を書くころだろうか。夕陽の光が西の山の稜線に隠れるのを見ても、「日が入りなさるところは西方極楽浄土であるそうだ。いつか我々も浄土に輪廻転生して生まれ、何も思い悩むことなく過ごすことができるだろうか。」このようなことにつけても、過去のつらかったことを、思い続けて、ただ尽きない物は涙である。


夕暮れ時も過ぎたので、竹で編んだあみ戸を閉じて、塞いで、灯をわずかに灯して、親子三人で念仏をしているところに、竹のあみ戸を、ほとほとと叩く者が来た。


その時祇王らは肝をつぶして「ああ、これは未熟な我々が念仏をしているのを妨げようとして魔物が来ているのであるでしょう。昼でさえも人が訪れない山里の柴の庵の中であるので、まして夜が更けてから、誰が訪れてくるというのでしょうか。貧弱な竹のあみ戸であるので、わざわざ開けなくてもおし破る事はたやすいでしょう。いっそのこと開けて入れようと思うのです。もしそれで無情にも、私たちが命を失うようなことになるのであるなら、長年、頼りにし申し上げている阿弥陀様の本願を強く信じて、絶え間なく“南無阿弥陀仏”と阿弥陀様の名を唱え続けましょう。私たちの声を尋ねてお迎えに来てくださるという尊い仏様のご来迎ですから、どうしてお導きがないでしょう、いや必ず極楽浄土に導いてくださるはずです。決して念仏を怠りなさるな。」と、互いに心を戒めて、竹のあみ戸を開けてみたところ、そこにいたのは魔物ではなかった。


仏御前が姿を現した。

posted by manabiyah at 17:24| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする