「平家物語」各場面の原文朗読・現代語訳・解説の音声ファイルを公開しています。
全て無料でダウンロード可能です。
オススメの使い方は→こちらをご参照ください。

2010年10月28日

10分でわかる「平家物語」巻一「清水寺炎上」(後白河院と清盛の関係が微妙なものになっていくのを予感させる場面)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
再生ボタンをクリックして聴くことができます。(各回10分程度)
右端のDLボタンからダウンロードしてiPodなどに入れて、
繰り返し聴くこともできます。(ページ下に全訳あり。)


衆徒かへりのぼりにければ、一院六波羅より還御なる。重盛卿ばかりぞ御ともにはまいられける。父の卿はまいられず。猶、用心のためかとぞ聞こえし。


重盛の卿御送りよりかへられたりければ、父の大納言のたまひけるは、「さても一院の御幸こそ大に恐れおぼゆれ。かねても思しめしより仰らるる旨のあればこそ、かうは聞こゆらめ。それにもうちとけたまうまじ」とのたまへば、重盛卿申されける、「此事ゆめゆめ御けしきにも、御ことばにも出させ給ふべからず。人に心つけがほに、中々あしき御事也。それにつけても、叡慮に背き給はで、人の為に御情をほどこさせましまさば、神明三宝加護あるべし。さらむにとては、御身の恐れさうらふまじ」とてたたれければ、「重盛卿はゆゆしく大様なるものかな」とぞ、父の卿ものたまひける。


一院還御の後、御前にうとからぬ近習者達あまたさうらはれけるに、「さても不思議の事を申し出したるものかな。露もおぼしめしよらぬものを」と仰せければ、院中のきりものに西光法師といふものあり。おりふし御前近うそうらいけるが、「『天に口なし、人をもていはせよ』と申す。平家以っての外に過分に候ふあひだ、天の御ぱからひにや」とぞ申ける。人々「此事よしなし。壁に耳あり。おそろしおそろし」とぞ、申しあはれける。


平家物語連続講義のこれまでの内容を物語の展開順にまとめました。
「平家物語連続講義放送リスト」
------------------------------------------------------------------------------------
【アイテム紹介】「平家物語」で繰り返し生じる清盛と後白河法皇の対立。「重盛は法皇と清盛の対立を超越した運命の予言者である」という解釈をされているのが、石母田正氏。「岩波新書青版・平家物語」 は平家物語成立の過程に対しての考察など、「平家物語」を読み解くためのエッセンスが凝縮された歴史的名著です。


タイトルor画像↓をクリックすると詳細が表示されます。
平家物語 (岩波新書)


------------------------------------------------------------------------------------

〈現代語訳〉


比叡山延暦寺の僧侶たちがは山へと帰っていったので、後白河院は六波羅の清盛もとから御所へとお帰りになった。重盛卿だけがそのお供に参上した。父である清盛は参上されなかった。


依然として用心しているためかと噂になった。平重盛が院のお送りから帰りなさったので、父である清盛大納言がおっしゃったことには、「それにしても後白河院が六波羅へとお出でになったのは大いに恐れ多いことだが。以前から院御自身が平家討伐を企てていたから、またその旨おっしゃられていたから、このような噂が立っているのだろう。そなたも油断してはいけない。」とおっしゃると、重盛卿が申されたことには「このことは決して決してご様子にもお言葉に出しなさってはいけない。人の気を引くことになって、かえって悪いことです。こういった状況であっても、院のお考えに背きなさらずに、また、人にたいして情けを施しなさるならば、神や仏のお守りがあるはずでしょう。そうなったら、父上の身に恐れることはございませんでしょう。」といって、座を立たれたので、「重盛は大変に心の広く落ち着いた器の大きい者だなあ」と父清盛もおっしゃった。


後白河院は御所にお帰りになった後、御前に気心の知れた、いつも近くに仕えている者たちがたくさんお控え申しあげている場で、「それにしても世の中の者は不思議なうわさを言い出したものだ。まったく思いついてもいなかったのに。」とおっしゃった。院の周りをとりしきっている者で西光法師という者がいる。ちょうどその時、院の前に控え申しあげていたのだが、「『天には口は無いが、人の口を使ってものを言わせる』と申します。平家があってはならないくらいに身に余る地位におりますので、天が慮ったのであろう。」と申した。人々は「こんなことを言ってはよくありません。『壁に耳あり』と言います、恐ろしい恐ろしい。」と人々は申し上げあった。

posted by manabiyah at 00:00| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする