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2010年11月25日

10分でわかる「平家物語」巻二「西光被斬」(打倒平家の動きを清盛へと多田蔵人行綱が密告)

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同五月廿九日のさ夜ふけがたに、多田蔵人行綱、入道相国の西八条の亭に参ッて、「行綱こそ申すべき事候ふ間、参って候へ」といはせければ、入道「つねにも参らぬ者が参じたるは何事ぞ。あれきけ」とて、主馬判官盛国を出だされたり。「人伝には申まじき事なり」といふ間、さらばとて、入道みづから中門の廊へ出られたり。


「夜ははるかにふけぬらむ。ただ今いかに、何事ぞや」とのたまへば、「昼は人目のしげう候ふ間、夜にまぎれて参って候ふ。此程院中の人々の兵具をととのへ、軍兵をめされ候ふをば、何とか聞し召され候ふ」。「それは山攻らるべしとこそきけ」と、いと事もなげにぞの給ひける。行綱、近うより、小声になて申しけるは、「其儀では候はず。一向御一家の御上とこそ承り候へ」。「さてそれをば法皇も知ろし召されたるか」。「子細にや及び候。成親卿の軍兵めされ候ふも、院宣とてこそ召され候へ。」俊寛がとふるまうて、康頼がかう申して、西光がと申してなどいふ事共、始めよりありのままにはさし過ぎていひ散し、「いとま申して」とて出にけり。


入道大いに驚き、大声をもて侍共よびののしり給ふ、聞くもおびたたし。行綱なまじひなる事申しいだして、証人にやひかれんずらんと恐ろしさに、大野に火をはなたる心地して、人も追はぬにとり袴して、いそぎ門外へぞ逃げ出ける。


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「平家物語連続講義放送リスト」


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西光被斬──市川段四郎
小教訓──岡橋和彦
大納言死去──下條アトム
徳大寺厳島詣──富沢亜古
卒都婆流──下條アトム
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〈現代語訳〉


同じく治承元年5月29日の夜更け頃、多田蔵人行綱が入道相国平清盛の西八条の邸に参って、「私、行綱はもうすべきことがございますゆえ、参っております。」と人を介して言わせたので、清盛入道は「いつもは参らない者が参っているのは何事だ、お前が聞いてこい。」と、主馬判官盛国(しゅめのはんがんもりくに)を対応に出した。「人づてでは申しあげられない事です。」というので、そうであるならば、ということで清盛入道ご自身が中門の廊へと出て来られた。


(清盛が)「夜はだいぶ更けているであろう。今頃、いったい何事だ。」とおっしゃると、(行綱)「昼間は人目が多くございますので、夜にまぎれて参っております。この頃、院側の人々が武器を集めて、兵を呼び集められておりますのを、どのようにお聞きになられますか?」(清盛は)「それは比叡山をお攻めになるはずだと聞いている。」とこともなげにおっしゃった。行綱が近くから小声で清盛に申しあげることには、「そういうことではありません。すべて平家一門のためだと承っております。」(清盛)「それではそれを法皇もご存じなのか。」(行綱)「あれこれ言うまでもなくそうでございます。成親卿が軍をお集めになっておりますのも、院の命令であるとして、お呼びになられております。」俊寛がどうふるまって、康頼がこのように申して、西光がこう申してなどなどと(行綱は)初めからありのままに大げさに言い散らして「それではおいとま申し上げます。」と言って出て行った。


清盛入道が大いに驚いて、大声で侍たちを呼んで大騒ぎしたその様子は、耳で聞くだけでもすさまじい。行綱は自分がなまじ言わなくてもいい事まで言い出したせいで、後に証人にでも呼ばれるだろうかと恐ろしくなって、あたかも自分が広い野原に火を放ったような後ろめたい感じがして、人が追ってくるわけでもないのに、走りやすいように袴をまくって、急いで門の外へと逃げた。

posted by manabiyah at 00:00| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする