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2010年12月09日

10分でわかる「平家物語」巻二「小教訓」(新大納言藤原成親を助けようとする平重盛)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
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繰り返し聴くこともできます。(ページ下に全訳あり。)


車よりおり給ふ処に、貞能つと参て、「など是程の御大事に、軍兵共をば召し具せられ候はぬぞ」と申せば、「大事とは天下の大事をこそいへ。かやうの私事を大事と云ふ様やある」とのたまへば、兵杖を帯したる者共も、皆そぞろいてぞ見えける。


「そも大納言をばいづくに置かれたるやらん」とて、ここかしこの障子引あけ引あけ見給へば、ある障子のうへに、蛛手結うたる所あり。ここやらんとてあけられたれば、大納言おはしけり。涙にむせびうつぶして、目も見あはせ給はず。「いかにや」とのたまへば、其時みつけ奉り、うれしげに思はれたるけしき、地獄にて罪人共が地蔵菩薩を見奉るらんも、かくやとおぼえてあはれなり。


「何事にて候ふやらん、かかる目にあひ候ふ。さてわたらせ給へば、さりともとこそたのみ参らせて候へ。平治にも既誅せらるべかりしを、御恩をもて頸をつがれ参らせ、正二位の大納言にあがッて、歳既四十にあまり候ふ。御恩こそ生々世々にも報じつくしがたう候へ。今度も同じくは、かひなき命を助けさせおはしませ。命だに生きて候はば、出家入道して高野粉河に閉じ籠り、一向後世菩提のつとめをいとなみ候はん」と申されければ、


大臣、「誠にさこそは思し召され候らめ。さ候へばとて、」御命失ひ奉るまではよも候はじ。たとひ、さは候ふとも、重盛かうて候へば、御命にもかはり奉るべし」とて出られけり。


平家物語連続講義のこれまでの内容を物語の展開順にまとめました。
「平家物語連続講義放送リスト」


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【アイテム紹介】「平家物語」の入門書としては最強のわかりやすさだと思います。それもそのはず、著者の千明守氏は、代々木ゼミナール講師の椎名守。予備校講師としても一流の著者による解説です。文体は架空の生徒と先生のやりとりの形式になっていて、大変に読みやすい本です。イラストなども豊富に使われていて、読んでいて眠くなりません。「平家物語」の参考書を買うならば、1冊目に選ぶべき本はこれです!

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平家物語が面白いほどわかる本



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〈現代語訳〉


重盛が車からおりなさると、平貞能(たいらのさだよし)が、参ってきて「どうしてこれほどの大事に、兵たちをお連れにならないのですか。」と申すと、(重盛が)「大事というのは天下の大事のことを言うものだ。このような私事を大事などということがあるか。いや言うことはできない。」とおっしゃると、武装していた兵たちも、みな動揺して見えた。


「いったい大納言をどこに置かれたのであろうか」と重盛があちこちの障子を開けて見なさると、ある障子の上に、木材を蜘蛛の足のように交差させて結びつけているところがある。「ここであろうか」とお開けになると、大納言がいらっしゃった。成親は涙にむせんでうつぶして、目も見合わせなさらない。重盛が「どうですか」とおっしゃると、その時初めて、成親は、重盛を見つけ申し上げて、嬉しそうに思いなさっている様子は、地獄で罪人たちが、地蔵菩薩を見申しあげている有様も、このようであろうかと、思われて不憫である。


(成親が)「何事でございましょう。私はこのような目にあっております。こうして、重盛様が、おいでくださったので、そうはいってもお助けくださるであろうと、頼りにし申しあげております。平治の乱でも、すでに処刑されるはずであったところを、重盛さまの御恩でもって、正二位の大納言の位にのぼって、歳はすでに40歳過ぎでございます。重盛さまの御恩は来世もその先もずっと、報いがたい程のものでございます。今回も、同じことなら、どうしようもない我が命をお助けください。命だけでも助かりますならば、出家し、仏の道に入って、高野山や粉河寺に隠遁し、ひたすらに来世に極楽往生できるように仏道修行を営むつもりです。」と申されたので、内大臣重盛は「本当にそこまで思いつめなさっているのでしょう。そうであるからといっても、命を奪い申し上げる事態までは、まさかございませんでしょう。たとえ、命に関わる事態がございますとしても、私、重盛がこのようにおりますので、いざとなれば、あなたを命にかえても、お守り申しあげましょう。」


posted by manabiyah at 00:00| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする