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2011年01月13日

10分でわかる「平家物語」巻二「烽火之沙汰その2」(清盛の法皇幽閉の計画を思いとどまらせた平重盛)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
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繰り返し聴くこともできます。(ページ下に全訳あり。)


「重盛こそ天下の大事を別して聞出したれ。我を我と思はん者共は、皆物具して馳参れと披露せよ」と宣へば、此由披露す。おぼろけにては騒がせ給はぬ人の、かかる披露のあるは別の子細のあるにこそとて、皆物具して我も我もと馳参る。淀・羽束師・宇治・岡の屋・日野・勧修寺・醍醐・小黒栖・梅津・桂・大原・しづ原、芹生の里に、あぶれゐたる兵共、あるいは鎧きていまだ甲を着ぬもあり、あるいは矢おうていまだ弓をもたぬもあり。片鐙ふむやふまずにて、慌て騒いで馳せ参る。


小松殿に騒ぐ事ありと聞えしかば、西八条に数千騎ありける兵共、入道にかうとも申しも入れず、ざざめきつれて、皆小松殿へぞ馳せたりける。少しも弓箭に携る程の者、一人も残らず。其時入道大きに驚き、貞能を召して、「内府は何と思ひて、これらをば呼びとるやらん。是でいひつる様に、入道が許へ討手などやむかへんずらん」と宣へば、貞能涙をはらはらと流いて、「人も人にこそよらせ給ひ候へ。いかでかさる御事候ふべき。今朝是にて申させ給ひつる事共も、みな御後悔ぞ候ふらん」と申しければ、入道内府に中たがうては悪しかりなんとや思はれけん、法皇むかへ参らせんずる事も、はや思とどまり、腹巻ぬぎをき、素絹の衣に袈裟うちかけて、いと心にもおこらぬ念珠してこそおはしけれ。


平家物語連続講義のこれまでの内容を物語の展開順にまとめました。
「平家物語連続講義放送リスト」


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【アイテム紹介】「平家物語」で繰り返し生じる清盛と後白河法皇の対立。「重盛は法皇と清盛の対立を超越した運命の予言者である」という解釈をされているのが、石母田正氏。岩波新書青版「平家物語」は平家物語成立の過程に対しての考察など、「平家物語」を読み解くためのエッセンスが凝縮された歴史的名著です。



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〈現代語訳〉


「私重盛は天下の一大事を聞きつけた。我こそはと思うようなものは、みな武装して馳せ参じろと告げ知らせよ。」と重盛がおっしゃるので、この旨が広く伝えられた。「並大抵のことでは騒ぎなさらない重盛様が、このようにお触れを出すということは特別の事情があるのだろう」と、皆が武装して我も我もと馳せ参じた。淀・羽束師(はつかし)・宇治・岡の屋・日野・勧修寺(かんじゅじ)・醍醐・小黒栖(おぐるす)・梅津・桂(かつら)・大原・しづ原、芹生(せりょう)の里に、各地にこぼれるように散っていた武士たちが、ある者は鎧を着て、まだ甲を身につけていない者もいる、ある者は矢を背負っていちが、弓を持たないものもいる、片方のあぶみを踏んだり踏まなかったりしている様子で、慌てて騒いで馳せ参じる。


重盛の邸で騒ぎがあると噂になったので、西八条に数千騎いた武士達が、清盛入道に何も申し入れず、騒ぎながらつれだって、皆、重盛の邸へ馳せ参じた。少しでも武芸に携わっているという程の者は、一人も残っていない。そのとき、清盛入道は大いに驚いて、貞能をお呼びになって「重盛は何を思って、これらの侍たちを呼び集めているのだろうか。ここで言ったように、私清盛入道のもとに、攻撃などをしむけようとでもしているのだろうか。」とおっしゃると、貞能は涙をはらはらと流して「そのようなことをするのは人によりなさることです。重盛様に限ってどうしてそのような事がございましょう。今朝、ここで申し上げなさったことも、いまは全て後悔なさっているでしょう。」と申したところ、清盛入道は重盛と仲違いしては良くないだろうとお思いになったのだろうか、後白河法皇を迎えて幽閉しようという計画を、もはや思いとどまって、鎧を脱ぎ、絹の衣に袈裟をかけて、まったく心にもない念仏をしなさった。

posted by manabiyah at 00:00| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする