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2011年01月27日

10分でわかる「平家物語」巻二「康頼祝言」(流された鬼界が島で熊野の神を信じて信仰し続ける、藤原成経と平康頼)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
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丹波少将・康頼入道は、もとより熊野信じの人々なれば、「いかにもして此島のうちに、熊野の三所権現を勧請し奉ッて、帰洛の事を祈り申さばや」と云ふに、俊寛僧都は天性不信第一の人にて、是を用ゐず。


二人はおなじ心に、もし熊野に似たる所やあると、島のうちを尋ねまはるに、或は林塘の妙なるあり、紅錦繍の粧しなじなに、或は雲嶺のあやしきあり、碧羅綾の色一つにあらず。山のけしき、木のこだちに至るまで、外よりもなほ勝れたり。南を望めば、海漫々として、雲の波煙の浪ふかく、北をかへり見れば、又山岳の峨々たるより、百尺の滝水みなぎり落ちたり。滝の音ことにすさまじく、松風神さびたる住ひ、飛滝権現のおはします那智のお山にさ似たりけり。さてこそやがてそこをば、那智のお山とは名づけけれ。此の峯は本宮、かれは新宮、是はそんぢやう其王子、彼王子など、王子王子の名を申して、康頼入道先達にて、丹波少将相ぐしつつ、日ごとに熊野まうでのまねをして、帰洛の事をぞ祈りける。


「南無権現金剛童子、願はくは憐みをたれさせおはしまして、古郷へかへし入させ給ひて、妻子をも今一度見せ給へ」とぞ祈りける。日数つもりてたちかふべき浄衣もなければ、麻の衣を身にまとひ、沢辺の水をこりにかいては、岩田河のきよき流れと思ひやり、高き所にのぼっては、発心門とぞ観じける。


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「平家物語連続講義放送リスト」



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〈現代語訳〉


成経少将と平康頼は、もともと熊野への信仰を持っていた人々なので、「なんとかしてこの島の中に熊野の三つ権現をお呼びして申し上げて、都に帰れるように祈り申し上げたい。」と言うが、俊寛僧都はもともと信仰心のまったくないものであって、これに賛成しない。


成経と康頼は、同じ気持ちで、「もしや熊野に似た場所があるだろうか」と島の中を尋ねまわっているうちに、あるところには美しく林がつらなる堤があり、紅の錦の織物で飾られたようにいろとりどりの花が咲き、あるところには雲間にそびえる高い峰で神秘的な場所があり、緑色のうすものと綾絹のように色合いがひとつでなく変化にとんでいる。山の様子、木立に至るまで、他の場所よりもやはり優れていた。南をのぞむと、海は満ち溢れんばかりに広がり、空の雲の波や、海の雲のような波が深く、北をふりかえって見ると、山がけわしくたっているところから、100尺の滝がみなぎり落ちている。滝の音は特にはなだしく、松の間を風が吹き抜け、神々しいたたずまいは、飛滝権現のいらっしゃる那智の山にいかにも似ていた。そしてすぐにそこを那智の山と名付けた。「この峯は本宮だ、あれは新宮だ、是はなになにの王子、あの王子だ」などとそれぞれ王子の名を申して、康頼入道が先にたって、成経を伴って、毎日、熊野詣での真似をして、都に帰れるように祈った。


「ああ、権現金剛童子よ!願うことなら憐れみを恵んでくださって私たちを都へ帰しなさって妻子にもう一度会わせてください!」と祈った。鬼界が島に来てから何日もたって、着替えるべききれいな衣もないので、麻の衣を身にまとって、沢辺の水を浴びて水ごりをして、岩田川の流れの清い流れだと思って、高い場所にのぼって、熊野本宮にあった発心門に見立てた。


posted by manabiyah at 00:00| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする