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2011年02月10日

10分でわかる「平家物語」巻三「御産」(後の安徳天皇となる皇子が誕生)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
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かかりしかども、中宮はひまなくしきらせ給ふばかりにて、御産もとみに成りやらず。入道相国・二位殿、胸に手を置いて、「こはいかにせん、いかにせん」とぞあきれ給ふ。人の物申しけれども、ただ「ともかうもよき様に、よき様に」とぞのたまひける。「さりとも軍の陣ならば、是程浄海は臆せじ物を」とぞ、後には仰せられける。


御験者は、房覚・昌雲、両僧正、俊堯法印、豪禅・実専、両僧都、各々、僧伽の句どもあげ、本寺本山の三宝、年来所持の本尊達、責めふせ、責めふせもまれけり。誠にさこそはと覚えてたッとかりける中に、法皇は折しも、新熊野へ御幸なるべきにて、御精進のついででなりける間、錦帳近く御座あッて、千手経をうちあげうちあげあそばされけるにこそ、今一きは事かはッて、さしも踊りくるふ御よりましどもが縛も、しばらくうち鎮めけれ。


法皇仰せなりけるは、「いかなる御物気なりとも、この老法師がかくて候はんには、いかでか近付き奉るべき。就中に今あらはるる処の怨霊共は、みなわが朝恩によッて人となッしものどもぞかし。たとひ報謝の心をこそ存ぜずとも、豈障碍をなすべきや。速にまかり退き候へ」とて「女人生産しがたからん時にのぞんで、邪魔遮生し、苦忍がたからんにも、心をいたして大悲呪を称誦せば、鬼神退散して、安楽に生ぜん」とあそばいて、皆水精の御数珠押しもませ給へば、御産平安のみならず、皇子にてこそましましけれ。


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〈現代語訳〉


このように祈祷が行われたが、中宮は絶え間なく陣痛がおこりなさるばかりで、出産はなかなかなされない。清盛と、母である時子は、中宮の胸に手をおいて、「これはどうしよう」と途方にくれなさる。人が清盛にあれこれ申しても、清盛入道はただ「とにかくよいように、よいように。」とおっしゃっるだけだった。「それにしても、いくさの陣であるなら、これほど私もおびえないのに」と、(清盛は)後にはおっしゃった。


祈祷をする僧は、房覚(ぼうかく)・昌雲(しょううん)の二人、さらに俊堯(しゅんぎょう)法印、豪禅(ごうぜん)・実専(じっせん)の二人。それぞれが、祈祷のことばをあげて、それぞれの寺の本山の仏や、長年祈っているご本尊に、強く強く祈った。本当に、これほどの祈りが捧げられたならその霊験もあるだろうと思われて尊かった中で、後白河法皇はちょうど、自らの作った新熊野神社に、お出ましになる予定になっていて、身を清める精進の機会であったので、中宮の寝所の周りにめぐらしたとばりの近くにおすわりになって、千手経(せんじゅきょう)を読み上げなさったのはひときわ様子が変わっていて、あれほど踊りくるっていたよりまし達の呪縛も、しばらくはおさまった。


法皇がおっしゃったことには、「どのような物の怪であろうと、この私のような老法師がこのように中宮のそばに控えているなら、どうして近づきもうしあげることができるだろうか。特に今現れているところの怨霊どもは、皆わが朝廷の恩によって一人前になったものどもだ。かりに感謝して恩に報いようという心を感じないことがあったとしても、どうして中宮のご出産を妨げるようなことがあろうか。速やかに退散するがよい。」といって「女人が難産でいる時に際して 邪悪な魔物が出産を妨げようとし 苦しみに堪え難い時にでも 心をつくして だらにを唱えたら 鬼神は退散して 安産できるだろう」と読みあげられて、水晶で作った数珠をおしもみなさると、ご出産は安産であったのみならず、皇子のご誕生でまでもあった。




posted by manabiyah at 00:00| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする