「平家物語」各場面の原文朗読・現代語訳・解説の音声ファイルを公開しています。
全て無料でダウンロード可能です。
オススメの使い方は→こちらをご参照ください。

2011年03月03日

10分でわかる「平家物語」巻三「有王」(鬼界が島に取り残されて俊寛僧都と弟子であった有王が再会)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
再生ボタンをクリックして聴くことができます。(各回10分程度)
右端のDLボタンからダウンロードしてiPodなどに入れて、
繰り返し聴くこともできます。(ページ下に全訳あり。)


ある朝、いその方よりかげろふなどのやうに痩せおとろへたる者一人よろぼひ出できたり。もとは法師にて有りけりと覚えて、髪は空さまへ生ひあがり、よろづの藻くづとり付いて、おどろをいただいたるがごとし。継ぎ目あらはれて皮ゆたひ、身に着たる物は絹布のわきも見えず。片手にはあらめをもち、片手には魚をもち、歩むやうにはしけれども、はかもゆかず、よろよろとして出できたり。


「都にて多くの乞丐人見しかども、かかる者をばいまだみず。「諸阿修羅等居在大海辺」とて、修羅の三悪四趣は深山大海のほとりにありと、仏の解きおき給ひたれば、知らず、われ餓鬼道に迷ひ来たるか」と思ふ程に、かれも是も次第に歩みちかづく。もしかやうのものも、わが主の御行方知りたる事やあらんと、「物まうさう」といへば、「何ごと」とこたふ。


「是に都よりながされ給ひし、法勝寺執行御房と申す人の、御行方や知りたる」と問ふに、童は見忘れたれども、僧都はいかで忘るべきなれば、「是こそそよ」といひもあへず、手に持てる物をなげ捨て、いさごの上に倒れふす。さてこそわが主の御行方は知りてンげれ。


平家物語連続講義のこれまでの内容を物語の展開順にまとめました。
「平家物語連続講義放送リスト」

------------------------------------------------------------------------------------
【アイテム紹介】「琵琶法師ー〈異界〉を語る人びと」は「平家物語」の語り手であった琵琶法師のルーツや現代に至るまでの歴史を語っています。特に「鬼界ヶ島」を巡る物語の成立と伝承と「聖(ひじり)」たちの関わりについて述べた部分は非常に興味深いです。琵琶法師に興味がある方は是非、読んでみてください!!

タイトルor画像↓をクリックすると詳細が表示されます
琵琶法師ー〈異界〉を語る人びと


------------------------------------------------------------------------------------

〈現代語訳〉


ある朝、磯の方からトンボのようにやせ衰えた者がひとりよろめきながらやってきた。もとは法師であったと思われて、髪は空の方へと生え上がり、その髪に藻のくずが付いて、いばらを頭に載せているようだ。関節が現れて、皮はたるんで、その身に着ているものは絹と布の区別もわからない。片手には海藻をもって、片手には魚を持って、歩こうとはしたけれど、はかどらず、よろめきながらやって来た。


「都で多くの物乞い行為をしているものを見たが、このような者はいまだに見た事が無い。諸々の阿修羅などは、海辺に住むというように、修羅の三悪や四趣は深山大海のほとりにあると仏が説いておきなさったので、知らないうちに私は餓鬼道に迷いきたのか。」と思ううちに、その者も有王も次第に歩んで近づいた。「もしかしてこのような者であっても、私の主人の行方を知っていることもあるだろうか。」と、有王が「物をお尋ねもうしあげます」と言うと、その者も「何事だ」と答える。


「ここに都から流されなさった法勝寺執行であった俊寛と申す人の、行方を知っているか。」と問うと、有王の方は見忘れていたけれど、僧都は決して有王を忘れていなかったので、「私こそがその俊寛だよ。」と言い終わらないうちに、手に持っていた海藻と魚を投げ捨てて、砂の上に倒れ臥した。そして有王は自分の主人の行方を知ってしまった。


posted by manabiyah at 00:00| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする