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2011年03月31日

10分でわかる「平家物語」巻三「医師問答その2」(ことあるごとに清盛を諌めてきた人格者重盛がとうとう亡くなる)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
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「重盛いやしくも九卿に列して三台にのぼる。其運命をはかるに、もッて天心にあり。なんぞ天心を察せずして、愚かに医療をいたはしうせむや。所労もし定業たらば、医療を加ふとも益なからんか。又非業たらば、療治を加へずともたすかる事をうべし。彼耆婆が医術及ばずして、大覚世尊、滅度を抜提河の辺に唱ふ。是則、定業の病、癒さざる事を示さんが為也。定業猶医療にかかはるべう候はば、豈に釈尊入滅あらんや。


定業又治するに堪へざる旨あきらけし。治するは仏体也、療するは耆婆也。しかれば重盛が身仏体にあらず、名医又耆婆に及ぶべからず。たとひ四部の書をかがみて、百療に長ずといふ共、いかでか有待の穢身を救療せん。たとひ五経の説を詳にして、衆病をいやすといふとも、豈に先世の業病を治せんや。もしかの医術によて存命せば、本朝の医道なきに似たり。医術効験なくんば、面謁所詮なし。就中本朝鼎臣の外相をもッて、異朝富有の来客にまみえん事、且つうは国の恥、且は道の陵遅也。たとひ重盛命は亡ずといふとも、いかでか国の恥をおもふ心を存ぜざらん。此由を申せ」とこそのたまひけれ。


平家物語連続講義のこれまでの内容を物語の展開順にまとめました。
「平家物語連続講義放送リスト」


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【アイテム紹介】「平家物語」で繰り返し生じる清盛と後白河法皇の対立。「重盛は法皇と清盛の対立を超越した運命の予言者である」という解釈をされているのが、石母田正氏。岩波新書青版「平家物語」は平家物語成立の過程に対しての考察など、「平家物語」を読み解くためのエッセンスが凝縮された歴史的名著です。



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平家物語 (岩波新書)


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〈現代語訳〉


「私重盛はいやしくも公卿の列に連なって、大臣にまで昇っている。その運命を鑑みると、これは天の思し召しにある。どうして天の思し召しを察しないで、愚かにも医療などの面倒なことをしようか。この病いが定まった運命であるなら、治療を施しても効果は無いだろう。また運命によるものでないなら、治療を施さなくても助かることができるだろう。あの名医耆婆(ぎば)の医術が及ばず、お釈迦様は、抜提河(ばつだいが)のほとりで亡くなられた。これは、定まった運命による病は癒せない事を示そうとするためである。定まった運命がやはり医療によってなんとかなるなら、どうして釈迦が亡くなることがあるだろうか。いやない。


定まった運命を治療することはかなわないことが明らかだ。治療しようとしたのは釈迦の身体、治療行為をするのは名医耆婆である。そうであるので、私、重盛の身は仏の身ではない、その宋から来た名医も、また耆婆には及ばないはずだ。たとえ医学の世界で四書と呼ばれる四冊の権威ある本をみて、百の治療法に通じているといっても、どうして衣食に頼って生きるけがれた我が身を救って治療できるだろうか。いやできない。たとえ医学の世界の五経とされる五冊の名著の説に詳しく、様々な病気を治すといっても、どうして前世からの定めによる病を治すことができるだろう。いやできない。もし私が宋の国の医術によって命をつなぎ止めたら、我が国に医学の道がないようなものだ。なおかつその宋の国の医術に効果が無いなら、宋の医師に会っても仕方が無い。特に、我が国の大臣である立場で、外国からふらりとやってきた来客に会うことは、一方で国の恥であり、もう一方で正しい政治の道が衰退していくことである。たとえ私重盛が死んだとしても、どうしてわが国の恥を思う心がないだろうか、いや、ある。この旨を父清盛に申し上げよ。」とおっしゃった。



posted by manabiyah at 00:00| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする