「平家物語」各場面の原文朗読・現代語訳・解説の音声ファイルを公開しています。
全て無料でダウンロード可能です。
オススメの使い方は→こちらをご参照ください。

2011年04月21日

10分でわかる「平家物語」巻三「法皇被流その2」(鳥羽殿に幽閉されてしまった後白河法皇が死を予感し行水を願う)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
再生ボタンをクリックして聴くことができます。(各回10分程度)
右端のDLボタンからダウンロードしてiPodなどに入れて、
繰り返し聴くこともできます。


さて御車に召されけり。公卿、殿上人、一人も供奉せられず。ただ北面の下臈、さては金行といふ御力者ばかりぞ参りける。御車の尻には、尼ぜ一人参られたり。この尼ぜと申すは、やがて法皇の御乳の人、紀伊二位の事也。七条を西へ、朱雀を南へ御幸なる。あやしの賎男賎女にいたるまで、「あはや法皇の流されさせましますぞや」とて、泪をながし、袖をしぼらぬはなかりけり。「去七日の夜の大地震も、かかるべかりける先表にて、十六洛叉の底までもこたへ、乾牢地神の驚き騒ぎ給ひけんも理かな」とぞ、人申しける。


さて鳥羽殿へ入らせ給ひたるに、大膳大夫信業が、何として紛れ参りたりけるやらむ、御前ちかう候ひけるを召して、「いかさまにも今夜失なはれなんずと思し召すぞ。御行水をめさばやと思し召すはいかがせんずる」と仰せければ、さらぬだに信業、けさより肝たましいも身にそはず、あきれたるさまにてありけるが、此の仰せ承るかたじけなさなさに、狩衣に玉だすきあげ、小柴墻壊り、大床のつか柱わりなどして、水くみ入れ、かたのごとく御湯しだいて参らせたり。


平家物語連続講義のこれまでの内容を物語の展開順にまとめました。
「平家物語連続講義放送リスト」

------------------------------------------------------------------------------------
【アイテム紹介】当サイトは「オーディオ」ファイルによる「平家物語」の解説を行っていますが、是非とも併用して頂きたい本がこちらです。当時の武具、衣食住の図や、物語の舞台となった名所旧跡の写真などなど「ビジュアル的」に平家物語を理解するには、最強の本です。じっくり読み込んでも良し。ただ眺めているだけでもとても楽しい本です!
書名or表紙画像↓をクリックすると詳細が表示されます。
平家物語図典


IMG_8177.JPG


IMG_8179.JPG


------------------------------------------------------------------------------------

〈現代語訳〉


そして後白河法皇は車に乗りなさった。公卿、殿上人、一人もお連れにならない。ただ北面の武士である身分の低い金行という下僕だけが参上した。車の後ろに尼御前ひとりが参られた。この尼御前と申す人はまさしく法皇の乳母である人、紀伊二位のことである。七条大路を西へ、朱雀大路を南へいきなさった。いやしい下賎の男や女にいたるまで、「ああ法皇が流されなさるのだ」と涙を流して、袖を絞らないものはいなかった。「さる七日の夜の地震もこのようなことになる前兆で、一六〇万由旬の地底の最も深い奥底まで響いて、大地を堅牢にしている神が、驚き騒ぎなさったとかいうのも当然のことだ。」と人々は申した。


そして後白河法皇が鳥羽殿へお入りになると、大膳大夫の信業がどのようにして紛れ参ったのであろうか、法皇の前近くにお控え申し上げているのを法皇がお呼びになって「私はきっと今夜にでも命を奪われるだろう。行水をしたいと思うのだがどうであろうか。」とおっしゃられたので、ただでさえ今朝から信業は、魂が身体から離れたような様子で、呆然とした状態であったのだが、後白河法皇のおっしゃることのかたじけなさに、狩衣の上からたすきをかけて、小柴垣を壊して、大床の下の短い柱を割って薪にして、水を汲みいれて、型通りにお湯を用意し申し上げた。

posted by manabiyah at 00:00| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする