「平家物語」各場面の原文朗読・現代語訳・解説の音声ファイルを公開しています。
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2011年05月05日

10分でわかる「平家物語」巻四「厳島御幸」(安徳天皇即位にまつわる人々の反応)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
再生ボタンをクリックして聴くことができます。(各回10分程度)
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繰り返し聴くこともできます。(ページ下に全訳あり。)


新帝今年は三歳、あはれ、いつしかなる譲位かなと、時の人々申しあはれけり。平大納言時忠卿は、内のめのと、帥のすけの夫たるによッて、 「今度の譲位いつしかなりと、誰かかたむけ申すべき。異国には、周成王三歳、晋穆帝二歳、我朝には、近衛院三歳、六条院二歳、これみな襁褓のなかにつつまれて、衣帯をただしうせざッしかども、或は摂政おふて位につけ、或は母后いだいて朝にのぞむと見えたり。後漢の孝殤皇帝は、生れて百日といふに践祚あり。天子位をふむ先蹤、和漢かくのごとし」と申されければ、其時の有職の人々、「あな恐ろし、物な申されそ。さればそれはよき例どもかや」とぞつぶやきあはれける。


春宮位につかせたまひしかば、入道相国夫婦ともに外祖父外祖母とて、准三后の宣旨をかうぶり、年官、年爵をたまはッて、上日のものをめしつかふ。絵かき花つけたる侍どもいで入て、ひとへに院宮のごとくにてぞありける。出家入道の後も栄雄はつきせずとぞ見えし。出家の人の准三后の宣旨を蒙る事は、法興院の大入道殿兼家公の御例なり。


平家物語連続講義のこれまでの内容を物語の展開順にまとめました。
「平家物語連続講義放送リスト」

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【アイテム紹介】「平家物語」の受容史を語ったのがこちらの「『平家物語』の再誕―創られた国民叙事詩 (NHKブックス No.1206)」です。「創られた国民的叙事詩」というのは面白い視点。「平家物語」は国民的な文学であり叙事詩である、という一般常識はいかにして成立したかについて、客観的・学術的に分析がされています。「平家物語」の受容のされ方を通じて、明治以降、近代日本の文学が何を求めて、何を価値として来たのかも、透けて見えて来ます。ちなみに、この本は早稲田大学辺りの入試問題(文化構想学部とか)で「現古融合問題」「文語文融合問題」等の形で、出題がありそうな予感がします。
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『平家物語』の再誕―創られた国民叙事詩 (NHKブックス No.1206)

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〈現代語訳〉


新たな帝は三歳、「ああ早過ぎる譲位だなあ。」と時の人々は申し合いなさった。大納言であった平時忠は、新たな帝の乳母である「そつのすけ」という女性の夫だったので、「今回の譲位が早過ぎるなどと、誰が非難申し上げることができようか。外国の例では周の成王(せいおう)が三歳、晋の穆帝(ぼくてい)が二歳で、我が国の例では近衛院は三歳、六条院は二歳で、これらは皆、産着の中に包まれて、衣服や帯を正しく身につけることはまだできなかったが、あるものは摂政が背負って位につけて、あるものは母である后が抱いてまつりごとに臨んだと見えた。後漢の孝殤(こうしょう)皇帝は、生まれて百日で帝のくらいを継いだ。天子の位に着いた先例は我が国も中国もこのようなものだ。」と申しあげたところ、その時の宮廷の故実や、礼法に通じている人々が「ああ恐ろしい。余計な事を申し上げなさるなそもそもそれらが良い例だろうか。」と互いにつぶやきあいなさった。


皇太子が帝の位にお着きになったので、清盛入道と妻の時子は夫婦でともに外祖父、外祖母として、皇后や皇太后などと並ぶ地位であるとする宣旨を頂き、年官(ねんがん)、年爵(ねんじゃく)という形で収入を頂いて、当番として仕える者を召し使った。絵を描いて花をつけている侍が出入りして、ただひたすら院や宮のような様子であった。出家し仏道に入っても清盛の栄華は尽きていないと見えた。出家をした者が、皇后や皇太后などと並ぶ地位であるとするという宣旨を頂いたことは、藤原兼家公の前例にならったものだ。


posted by manabiyah at 00:00| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする