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2011年07月07日

10分でわかる「平家物語」巻四「競」その2(仲綱が宗盛へ馬の恨みを見事に晴らす)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
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三井寺には折ふし競が沙汰ありけり。渡辺党「競をば召しぐすべう候ひつる物を。六波羅に残りとどまッて、いかなるうき目にかあひ候ふらん」と申ければ、三位入道心を知ッて、「よもその者、無台にとらへからめられはせじ。入道に心ざしふかい者なり。いまみよ、只今参らうずるぞ」とのたまひもはてねば、競つといできたり。「さればこそ」とぞのたまひける。


競かしこまッて申しけるは、「伊豆守殿の木の下がかはりに、六波羅の煖廷こそとッて参ッて候へ。参らせ候はん」とて、伊豆守に奉る。伊豆守なのめならず悦びて、やがて尾髪をきり、金焼きして、次の夜六波羅へつかはし、夜半ばかり門のうちへぞおひいれたる。馬やに入りて馬どもにくひあひければ、舎人おどろきあひ、「煖廷が参ッて候」と申す。大将いそぎ出でて見給へば、「昔は煖廷、今は平の宗盛入道」といふ金焼きをぞしたりける。大将「やすからぬ競めを、手延びにしてたばかられぬる事こそ遺恨なれ。今度三井寺へ寄せたらんには、いかにもしてまづ競めを生捕りにせよ。のこぎりで頸きらん」とて、躍りあがり躍りあがりいかられけれども、煖廷が尾かみも生ひず、金焼きも又うせざりけり。


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〈現代語訳〉


三井寺ではちょうどその時、競(きおう)について話題になっていた。渡辺党のものが言う。「競をお呼びになって連れてくれべきであったのに、六波羅に残り留まって、今頃どのような目にあっておりますでしょう。」三位入道源頼政は、競の思惑を知っていて、「まさかその者は無理にとらえられて絡めとられたりはしないだろう。私への忠誠心が深い者である。今に見よ、すぐに参るだろうよ。」とおっしゃる言葉が終わらないうちに、競がさっと現れた。「だから言った通りだ」と頼政はおっしゃった。


競がかしこまって申したことには、「伊豆守源仲綱様が飼っていた名馬『木の下(このした)』の代わりに、六波羅の『煖廷(なんりょう)』を取って参りました。さし上げましょう。」といって仲綱にさし上げた。仲綱は並々でなく喜んで、すぐに名馬煖廷の尾とたてがみを切って、金焼きをして、次の夜に六波羅へと遣わして、夜中に門の中へ追い入れた。煖廷は馬屋に入ってから、他の馬たちと噛み合いなどしたので、番人たちが驚きあって、煖廷がもどって参っておりますと宗盛に申し上げた。平宗盛が急いで出て来て見なさると、「昔の名は煖廷、今は平宗盛入道」という焼き印がしてあった。宗盛は「にっくき競に油断をして騙されてしまったことは悔しい。今度三井寺に攻め寄せた時には、なんとしても競を生け捕りにしろ! のこぎりで首を切ってやる。」と地団駄を踏んで激しくお怒りになったが、煖廷の尾もたてがみももう生える事は無く、金焼きもまた消える事は無かった。



posted by manabiyah at 00:00| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする