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2011年10月20日

10分でわかる「平家物語」巻五「文覚被流」(勧進帳を読み上げ神護寺修復のための寄付を訴えた文覚)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
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繰り返し聴くこともできます。(ページ下に全訳あり。)


折節、御前には太政大臣妙音院、琵琶かき鳴らし朗詠めでたうせさせ給ふ。按察大納言資方卿拍子とッて、風俗催馬楽うたはれけり。右馬頭資時・四位侍従盛定和琴かき鳴らし、今様とりどりに歌ひ、玉の簾、錦の帳の中ざざめきあひ、誠に面白かりければ、法皇もつけ歌せさせおはします。


それに文覚が大音声いできて、調子もたがひ、拍子もみな乱れにけり。「何者ぞ。そくびつけ」と仰せ下さるる程こそありけれ、はやりをの若物共、われもわれもと進みけるなかに、資行判官といふもの走り出でて、「何条事申すぞ。まかりいでよ」といひければ、「高雄の神護寺に庄一所よせられざらん程は、まッたく文覚いづまじ」とてはたらかず。よッてそくびをつかうどしければ、勧進帳をとり直し、資行判官が烏帽子をはたと打ッてうちおとし、こぶしをにぎてしや胸をつゐて、のけにつき倒す。資行判官もとどり放って、おめおめと大床の上へ逃げのぼる。


其後文覚ふところより馬の尾で柄まいたる刀の、氷のやうなるを抜きいだいて、よりこん物をつかうどこそ待ちかけたれ。左の手には勧進帳、右の手には刀をぬいて走りまはるあひだ、思ひまうけぬにはか事ではあり、左右の手に刀を持ッたる様にぞ見えたりける。公卿殿上人も、「こはいかにこはいかに」と騒がれければ、御遊もはや荒にけり。院中の騒動なのめならず。


平家物語連続講義のこれまでの内容を物語の展開順にまとめました。
「平家物語連続講義放送リスト」

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〈現代語訳〉


ちょうどその時、院の前で太政大臣妙音院が琵琶かき鳴らし素晴らしく朗詠していた。按察大納言資方卿は拍子をとって、風俗や催馬楽を歌っていた。右馬頭資時・四位侍従盛定は和琴をかき鳴らして、今様をおのおの歌って、豪華な簾や帳の中でも音楽が響きあって、本当に赴き深かったので、法皇もそれに加わってお歌いになってた。


それなのに文覚の大声が聞こえてきて、調子も狂って、拍子もみな乱れてしまった。「何者だ。すぐにそいつの首を突き刺してしまえ。」とおしゃっている間はまだよいが、すぐに血気盛んな若者たちが、われもわれもと進んできた中に資行判官(すけゆきほうがん)というものが走り出てきて、「なんということを申すのだ、出て行け!」と言ったところ、(文覚が)「高雄の神護寺に荘園一箇所を寄付しなさらないうちは、決して文覚は出て行かない。」といったので、そこで文覚の首を突き刺そうとしたところ、文覚は勧進帳を持ち直して、資行判官が烏帽子をはたと打ってうち落とし、こぶしをにぎって相手の胸を突いて、仰向けに突き倒した。資行判官は髪の毛をあらわにして、おめおめと大床の方へと逃げのぼった。


その後、文覚はふところから、馬の尾でつかを巻いた刀で、氷のような刀を抜いて出して、寄ってくるものを突こうと待ち構えた。左手に勧進帳、右手に刀を抜いて走り回っていたため、また思いがけない突然の出来事でもあり、左右の手に刀を持っているような様子にも見えた。公卿も殿上人も「これはどうしたことだ」とお騒ぎになったので、管弦の催しはすっかり荒れてしまった。御所の騒ぎは並々では無かった。


posted by manabiyah at 00:00| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする