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2011年11月17日

10分でわかる「平家物語」巻五「富士川」(斎藤実盛から東国武士の恐ろしさを聞かされ、恐れおののく平家)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
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又大将軍権亮少将維盛、東国の案内者とて、長井の斎藤別当実盛を召して、「やや実盛、なんぢ程のつよ弓勢兵、八ケ国にいかほどあるぞ」と問ひ給へば、斎藤別当あざ笑ッて申しけるは、「さ候へば、君は実盛を大矢と思し召し候ふか。わづかに十三束こそつかまうり候へ。実盛程、射候ふものは、八ケ国にいくらも候ふ。大矢と申すぢやうの者の、十五束におとッて引くは候はず。弓のつよさもしたたかなる物五六人して張り候ふ。かかる精兵ども射候へば、鎧の二三両をもかさねて、たやすう射通し候ふなり。大名一人と申は、勢の少ないぢやう、五百騎におとるは候はず。馬に乗ッつれば落つる道を知らず、悪所を馳すれども馬を倒さず。軍は又、親も討たれよ、子も討たれよ、死ぬれば乗り越え乗り越え戦ふ候ふ。」


「西国の軍と申すは、親討たれぬれば孝養し、忌みあけてよせ、子討たれぬれば、その思ひ歎きに寄せ候はず。兵粮米つきぬれば、春は田つくり、秋は刈り収めてよせ、夏は暑しといひ、冬は寒しと嫌ひ候ふ。東国にはすべて其儀候はず。甲斐・信濃の源氏共、案内は知ッて候ふ。富士のすそより搦手にや、廻り候らん。かう申せば君を臆せさせ参らせんとて申すには候はず。軍は勢にはよらず、はかり事によるとこそ申しつたへて候へ。実盛今度の軍に、命生きてふたたび都へ参るべしとも覚え候はず」と申ければ、平家の兵ども、これを聞いて、みなふるひわななきあへり。


平家物語連続講義のこれまでの内容を物語の展開順にまとめました。
「平家物語連続講義放送リスト」

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【アイテム紹介】頼朝と義経兄弟の再会の場面を「義経記」では、この富士川の戦いの少し前「浮島が原」での出来事として描いています。「義経記」はちょうど平家物語で描いている物語の前後に該当する時代の義経の人生を物語としている作品です。牛若丸や遮那王の時代のエピソードや、静の舞のエピソードなども「義経記」に収録されています。世の中に知られている義経や弁慶のイメージはこの「義経記」に描かれた像によるところが大きいです。この小学館のバージョンは原文と現代語訳が段組みになっていて、読みやすく、注釈もしっかりと施されています。義経について、もっと深く知りたい方は「義経記」を読んでみるのも良いでしょう。
新編日本古典文学全集 62 義経記

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〈現代語訳〉


また大将軍平維盛は、東国に詳しいものとして長井の斎藤別当実盛をお呼びになって、「おい実盛よ、お前のような張りの強い弓を使うものや、精鋭の武士が、坂東八カ国にはどれほどいるのだ。」と問いなさると、斎藤別当があざわらって申したことには「そう言われますということは、あなたは私実盛を大きな矢を使うものとお思いでございますか。私はほんの十三束の矢を引くに過ぎません。私実盛程度の矢を射ますものは、八カ国にはいくらでもおります。大きな矢と申すもので十五束に劣って引くものはございません。弓の張りの強さも屈強なものが5、6人で張るほどの強さです。このような精鋭たちは射ますと、鎧の2、3着を重ねて、たやすく射通します。大名一人と申すのは軍勢の少ないものでも、500騎に劣りません。馬に乗ったなら落馬することはなく、道の悪いところを馳せても馬を倒すことはない。戦いに臨めば、親が討たれても子が討たれても構わず、死ぬものがいれば、その屍を乗り越え乗り越え戦います。 」


「西国の武士団と申すものは、親が討たれたならば、供養を行い、その忌みがあけてから攻め寄せ、子が討たれてしまうと、それを思い嘆いて攻め寄せません。食料が尽きてしまうと、春は田植えをし、秋は刈り取りをしてから攻めて、夏は暑いといって、冬は寒いといって戦うのを嫌います。東国ではまったくそのようなことはございません。甲斐や信濃の源氏はこの辺りの地理に通じております。富士山の裾野から背後に回っているでしょう。こう申し上げるからといって、私があなたを怯えさせようとして申すのではありません。戦いは軍勢によるのではなく、作戦によるものと申し伝えております。私実盛は今回の戦いで生きながらえて再び都に参ろうとは思っておりません。」と申したので、平家の武士たちはこれを聞いてみな震え、わななきあった。


posted by manabiyah at 00:00| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする