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2011年11月24日

10分でわかる「平家物語」巻五「富士川」その2(水鳥の羽音に驚いて戦わずして逃げ去ってしまった平家)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
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繰り返し聴くこともできます。(ページ下に全訳あり。)


さる程に、十月廿三日にもなりぬ。あすは源平富士河にて矢合と定めたりけるに、夜に入ッて、平家の方より源氏の陣を見わたせば、伊豆・駿河の人民・百姓等がいくさに恐れて、或は野にいり、山にかくれ、或は舟にとり乗ッて海河にうかび、いとなみの火の見えけるを、平家の兵ども、「あなおびたたしの源氏の陣の遠火のおほさよ。げにもまことに野も山も海も河もみな敵でありけり。いかがせん」とぞ慌てける。


其夜の夜半ばかり、富士の沼にいくらも群れゐたりける水鳥どもが、何にか驚きたりけん、ただ一度にばッと立ちける羽音の、大風、雷などの様に聞えければ、平家の兵ども、「すはや源氏の大勢の寄するは。斎藤別当が申しつる様に、定めて搦手もまはるらん。取り込められては叶ふまじ。ここをば引いて尾張河州俣を防げや」とて、とる物もとりあへず、我さきにとぞ落ちゆきける。あまりにあはて騒いで、弓とる物は矢を知らず、矢とる者は弓を知らず、人の馬にはわれ乗り、わが馬をば人に乗らる。或はつないだる馬に乗ッて馳すれば、杭をめぐる事かぎりなし。近き宿々より迎へとッてあそびける遊君遊女ども、或は頭蹴わられ、腰踏み折られて、おめき叫ぶ物多かりけり。



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【アイテム紹介】「平家物語」の入門書としては最強のわかりやすさだと思います。それもそのはず、著者の千明守氏は、代々木ゼミナール講師の椎名守。予備校講師としても一流の著者による解説です。文体は架空の生徒と先生のやりとりの形式になっていて、大変に読みやすい本です。イラストなども豊富に使われていて、読んでいて眠くなりません。「平家物語」の参考書を買うならば、1冊目に選ぶべき本はこの「平家物語が面白いほどわかる本」です!

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〈現代語訳〉


そうしているうちに10月13日になった。明日は源氏と平家が富士川で矢を合わせると決めたのだが、夜に入って平家の側から源氏の陣を見渡すと、伊豆や駿河の住民や農民がいくさを恐れて、あるものは野に入って、山に隠れて、あるものは船に乗って海や川に浮かんで炊事をする火が見えたので、平家の武士たちは「ああ、おびただしい源氏の陣のかがり火の多さだよ。本当に、野も山も河も、みな敵ばかりであるよ。どうしよう。」と慌てた。


その夜の夜半ほどに、富士の沼に何羽か群れていた水鳥が、何かに驚いたのであろうか、一度にばっと飛び立った羽の音が、大風や雷鳴のように聞こえたので、平家の武士たちが言うことには「ああ源氏の大軍が攻め寄せてきたぞ。斎藤実盛が申したようにきっと背後にも回っているだろう。とらえられてはたまらないだろう。ここを退却して、 尾張河州俣を守ろう。」と持つべきものも持てぬままに、我先にと落ちのびていった。あまりにも慌て騒いで、弓を持つものは矢を持たず、矢を持つものは弓を持たず、他人の馬には自分が乗り、自分の馬を人に乗られる。あるものは繋いだままの馬に乗って駆け出したので、繋いでいた杭の周りをグルグル回ることは限りなかった。近くの宿から迎えとっていた遊女たちは、あるものは頭を蹴られて割られ、腰を踏まれ折られて、わめき叫ぶものが多かった。

posted by manabiyah at 00:00| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする