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2011年12月29日

10分でわかる「平家物語」巻五「奈良炎上」その3(奈良の興福寺、東大寺が無惨にも焼失)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
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繰り返し聴くこともできます。(ページ下に全訳あり。)


恥をも思ひ、名をも惜しむ程のものは、奈良坂にて討ち死にし、般若寺にして討たれにけり。行歩にかなへるものは、吉野十津河の方へ落ちゆく。あゆみもえぬ老僧や、尋常なる修学者、児ども、女童部は、 大仏殿の二階のうへ、やましな寺のうちへ、われさきにとぞ逃げゆきける。大仏殿の二階の上には千余人のぼりあがり、かたきの続くをのぼせじと、橋をばひいてンげり。猛火はまさしうおしかけたり。おめきさけぶ声、焦熱・大焦熱・無間阿毘の炎の底の罪人も、これにはすぎじとぞ見えし。


興福寺は淡海公の御願、藤氏累代の寺なり。東金堂におはします仏法最初の釈迦の像、西金堂におはします自然涌出の観世音、瑠璃をならべし四面の廊、朱丹をまじへし二階の楼、九輪そらに輝きし二基の塔、たちまちに煙となるこそかなしけれ。


東大寺は、常在不滅、実報寂光の生身の御仏と思し召しなずらへて、聖武皇帝、手づからみづからみがきたて給ひし金銅十六丈の廬遮那仏、烏瑟たかくあらはれて半天の雲にかくれ、白毫新に拝まれ給ひし満月の尊容も、御くしは焼けおちて大地にあり、御身はわきあひて山のごとし。


平家物語連続講義のこれまでの内容を物語の展開順にまとめました。
「平家物語連続講義放送リスト」
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〈現代語訳〉


僧兵たちの中でも、恥を思い、名を惜しむような者たちは、奈良阪で討ち死にして、般若寺で討たれてしまった。歩くことのできるものは、吉野川や十津川の方へ落ちのびていく。歩けない老僧や、普通の修行者や、稚児や女子どもは、東大寺大仏殿の二階や、興福寺の中へと、我れ先に逃げていった。大仏殿の二階には千人あまりがのぼって、敵が続いてのぼってくるのをのぼらせまいと、階段を外してしまった。激しい炎がまさしくそこに襲ってきた。人々のわけき叫ぶ声は焦熱(しょうねつ)・大焦熱(だいしょうねつ)・無間阿毘(むけんあび)地獄の炎の底にいる罪人もこれ以上の責め苦はないと見えた。


興福寺は藤原不比等が願によって建てられた藤原氏代々の氏寺である。東金堂(とうこんどう)にいらっしゃる仏法最初の釈迦像、西金堂(さいこんどう)にいらっしゃった自然に湧き出た観音像、瑠璃を並べたかのような四面の回廊、朱と丹を混ぜて塗った二階の堂、九つの輪を空に輝かせた二つの塔、すべてが一瞬にして煙となったことは悲しいことだ。


東大寺は、常に不滅で、実報寂光(じっぽうじゃっこう)の悟りの世界に通じる仏のお姿になぞらえなさって、かたどって、聖武天皇が自らみがきたてなさった金銅一六丈の廬遮那仏が、もとどりのように高くなった頭の部分は、中空の雲に隠れて、額の白毫(びゃくごう)が、あらたかに拝まれなさる満月のような尊いお姿も、髪が焼け落ちて大地にあって、身体は熱で溶けて崩れて、山のようである。


posted by manabiyah at 00:00| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする