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2012年01月05日

10分でわかる「平家物語」巻六「新院崩御」(高倉上皇が亡くなる)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
再生ボタンをクリックして聴くことができます。(各回10分程度)
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繰り返し聴くこともできます。(ページ下に全訳あり。)


上皇は、おととし法皇の鳥羽殿におしこめられさせ給ひし御事、去年高倉の宮の討たれさせ給ひし御あり様、都遷りとてあさましかりし天下のみだれ、かやうの事ども御心ぐるしう思し召されけるより、御悩つかせ給ひて、つねはわづらはしう聞こえさせ給ひしが、東大寺・興福寺のほろびぬるよしきこしめされて、御悩いよいよおもらせ給ふ。法皇なのめならず御嘆ありし程に、同正月十四日、六波羅池殿にて、上皇遂に崩御なりぬ。


御宇十二年、徳政千万端詩書仁義の廃たる道をおこし、理世安楽の絶えたる跡を継ぎ給ふ。三明六通の羅漢もまぬかれ給はず、現術変化の権者も逃れぬ道なれば、有為無常の習ひなれども、ことはり過ぎてぞおぼえける。やがてその夜東山の麓、清閑寺へうつし奉り、ゆふべの煙とたぐへ、春の霞とのぼらせ給ひぬ。澄憲法印、御葬送に参りあはんと、いそぎ山よりくだられけるが、はや空しきけぶりとならせ給ふを見参らせて



つねに見し君が御幸を今日とへば帰らぬ旅ときくぞ悲しき



又ある女房、君かくれさせ給ひぬと承はッて、かうぞ思ひつづけける。


雲の上に行末遠くみし月の光きえぬときくぞ悲しき


御年廿一、内には十戒を保ち、外には五常をみだらず、礼儀をただしうせさせ給ひけり。末代の賢王にてましましければ、世の惜しみたて奉る事、月日の光をうしなへ失へるがごとし。かやうに人のねがひも叶はず、民の果報もつたなき人間のさかひこそかなしけれ。


平家物語連続講義のこれまでの内容を物語の展開順にまとめました。
「平家物語連続講義放送リスト」


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新院崩御──麻実れい
小督──島本須美
廻文──中西和久
入道死去──麿赤兒
横田河原合戦──山田純大
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〈現代語訳〉


高倉上皇は、一昨年に後白河法皇が鳥羽殿におしこめられなさったことや、去年、以仁王が討たれなさった有様や、福原遷都などという驚きあきれた天下の乱れなど、このようなことなどを心苦しくお思いになったことによって、ご病気になりなさって、いつも病いを患っているとうわさになりなさっていたが、東大寺や興福寺が滅びなさった旨をお聞きになって、ご病気はますます重くなりなさった。後白河法皇は並々でなくお嘆きになっていた頃に、同じ治承5年の正月14日に高倉上皇はついに亡くなってしまった。天皇に在位した12年間、徳に基づく政治は末端にまでおよび、詩経や書経にある仁義の道がすたれているのを復興し、世を治めて安楽にすることの絶えた道をつぎなさった。死は三明六通(さんみょうろくつう)の徳を備えた羅漢(らかん)も逃れることができなさらなず、神仏の化身であっても免れない道なので、ものごとは無常に変化しつづけるというのがこの世の習いだが、高倉上皇の死は、道理を越えて悲しいものと思われた。すぐにその夜、東山のふもとの清閑寺へご遺体を移しもうしあげて、ご遺体は、夕べの煙といっしょに、春の霞のように空へのぽりなさった。澄憲法印は葬儀に参ろうと急いで比叡山からくだってこられたが、はやくも空しい煙となりなさったのを見申し上げて


「いつも見ていた わが君のお出かけだが 今日はどこへいくのか尋ねると 帰らない旅へと 聞くのは悲しい」


またある女房が、主君がお亡くなりになったと承って、このように思い続けた。


「雲の上のような宮中で 行く末が遠く 見えていた月の 光が消えたと 聞くのは悲しい」


高倉上皇は21歳。心の中では仏教の十戒を守り、外面には儒教の仁義礼智信を乱さず、礼儀ただしくしなさっていた。世も末な時代における立派な帝でいらっしゃったので、世の人が惜しみもうしあげることは、月や太陽の光を失ったかのようであった。このように人の願いも叶わない、民の運命はめぐまれないもので、人間世界は悲しいものだ。




posted by manabiyah at 00:00| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする