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2012年01月12日

10分でわかる「平家物語」巻六「紅葉」(高倉天皇の人徳を伺わせる10歳当時のエピソード)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
再生ボタンをクリックして聴くことができます。(各回10分程度)
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繰り返し聴くこともできます。(ページ下に全訳あり。)


ある夜、野分はしたなう吹いて、紅葉みな吹き散らし、落葉頗る狼藉なり。殿守のとものみやつこ、朝ぎよめすとて、是をことごとくはき捨ててンげり。のこれる枝、ちれる木葉をかき集めて、風すさまじかりけるあしたなれば、縫殿の陣にて、酒あたためてたべける薪にこそしてんげれ。奉行の蔵人、行幸より先にといそぎゆいて見るに、跡かたなし。いかにと問へばしかしかといふ。


蔵人大きにおどろき、「あなあさまし。君のさしも執しおぼしめされつる紅葉を、かやうにしけるあさましさよ。しらず、なんぢ等、只今、禁獄流罪にも及び、わが身もいかなる逆鱗にかあづからんずらん」となげくところに、主上いとどしくよるのおとどを出させ給ひもあへず、かしこへ行幸なッて紅葉を叡覧なるに、なかりければ、「いかに」と御たづねあるに、蔵人奏すべき方はなし。ありのままに奏聞す。天気ことに御心よげにうちゑませ給ひて、「「林間煖酒焼紅葉」といふ詩の心をば、それらには誰がをしへけるぞや。やさしうもつかまつりける物かな」とて、かへッて叡感に預かッしうへは、あへて勅勘なかりけり。


平家物語連続講義のこれまでの内容を物語の展開順にまとめました。
「平家物語連続講義放送リスト」
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〈現代語訳〉


ある夜、木枯らしが折悪く吹いて、紅葉をみな吹き散らして、落ち葉が大変にあたりを散らかしてしまった。宮中の清掃を担当する「ともの寮」の下級の役人が、朝の掃除をしようとして、これをことごとく掃いて捨ててしまった。残った枝、散った木の葉をかき集めて、風の冷たい朝だったので、縫殿の陣で酒を温めて飲むためのたきぎにしてしまった。紅葉の山を管理していた蔵人が、天皇のお出ましよりも先にと急いで紅葉の山にいって見ると、紅葉は跡形もない。蔵人がどうしたのか問うと、(下級の役人は)「そういうことだ。」と答える。


蔵人は大いに驚いて「ああ、驚きあきれることだ。帝があれほどに拘ってお思いになった紅葉をこのようにしてしまったのはあきれることだ。どうなることかわからない。お前達はすぐに投獄流罪にまで及んで、私自身もどのようなお怒りを被るだろう。」と嘆くところに、高倉天皇は普段よりも早くご寝所から出なさるとすぐに、そちらにお出ましになって、紅葉ご覧になると、紅葉が無かったので、「どうしたのか。」とお尋ねがあったので、蔵人は帝に申し上げようがない、ありのままを報告し申しあげた。高倉天皇のご機嫌がとてもよくなり、気分良さそうにお笑いになって「『りんかんにさけをあたためて、こうようをたく(=林の中で紅葉を燃やして酒をあたためる)』という詩の意味を、その者たちに誰が教えたのか。優美なことをいたしたものだなあ。」と、かえって帝が感動なさったくらいなので、特に帝からお咎めをうけることは無かった。


posted by manabiyah at 00:00| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする