「平家物語」各場面の原文朗読・現代語訳・解説の音声ファイルを公開しています。
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2012年01月19日

10分でわかる「平家物語」巻六「葵前」(生前の高倉天皇と葵の前と呼ばれた女性との悲しい恋)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
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繰り返し聴くこともできます。(ページ下に全訳あり。)


主上是を聞し召して、其後は召されざりけり。御心ざしの尽きぬるにはあらず。ただ世のそしりをはばからせ給ふによッてなり。されば御ながめがちにて、よるのおとどにのみぞ入らせ給ふ。其時の関白松殿、「御心ぐるしき事にこそあむなれ。申しなぐさめ参らせん」とて、いそぎ御参内あッて、「さやうに叡虜にかからせましまさん事、何条事か候ふべき。件の女房とくとく召さるべしと覚え候。しなたづねらるるに及ばず。基房やがて猶子に仕り候はん」と奏せさせ給へば、主上「いさとよ。そこに申す事はさる事なれども、位を退いて後はままさるためしもあんなり。まさしう在位の時、さやうの事は後代のそしりなるべし」とて、聞し召しも入れざりけり。関白殿ちからおよばせ給はず、御涙をおさへて御退出あり。其後主上、緑の薄様のことに匂ひ深かりけるに、古き事なれども思し召しいでて、遊ばされける。


しのぶれどいろにいでにけりわがこひは ものやおもふとひとのとふまで


此御手習を、冷泉少将隆房給はりついで、件の葵の前に給はせたれば、顔うちあかめ、「例ならぬ心地いできたり」とて、里へ帰り、うち臥す事五六日して、ついにはかなくなりにけり。「君が一日の恩のために、妾が百年の身をあやまつ」ともかやうの事をや申すべき。

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〈現代語訳〉


高倉天皇はこのうわさをお聞きになって、それ以後はその葵の前をお呼びにならなかった。愛情が尽きてしまったからではない。ただ世間からのそしりに対し遠慮しなさったことによってである。そうであるので高倉天皇は物思いに耽りがちで、寝室にばかり入りなさっている。その時、関白であった藤原基房殿が、「帝はお心苦しいことであるでしょう。お慰め申しあげよう」と「そのように帝は悩みなさっておりますが、何か問題があるでしょうか、いやありません。その女房をすぐにお召しになられるべきだと思われます。その女の身分を問うには及びません。私基房がすぐに養女にいたしましょう。」と天皇に申し上げなさると、高倉天皇がいうには「さあどうだろうか、あなたが申すことはその通りであるが、退位して後なら時々はそのような例もあるそうだが、まさしく天皇の位にある時に、そのようなことをしては後の時代に非難を受けることとなるだろう。」といって、お聞き入れにならなかった。関白殿は力及ばずにいらして、涙を抑えながら退出なさった。その後高倉天皇は緑色の薄様の紙にで、特に色の濃い紙に、古い歌であるが思い出しなさってお書きになった。


「忍んでいたが 様子に出てしまった 私の恋は 物思いをしているのかと 人が問うほどに」


この高倉天皇の書いた手習を、冷泉少将藤原隆房がとりついで、例の葵の前にお与えになったところ、顔を赤らめて「体調が悪くなりました」と里へ帰り、寝込むこと5、6日で、とうとう亡くなってしまった。「君の一日の寵愛によって、女が生涯を誤った。」というのも、このような事を申すのだろうか。


posted by manabiyah at 00:00| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする