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2012年02月02日

10分でわかる「平家物語」巻六「小督」その2(仲国が小督を見つけるために嵯峨へと向かう)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
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繰り返し聴くこともできます。(ページ下に全訳あり。)



かくて八月十日あまりになりにけり。さしもくまなき空なれど、主上は御涙にくもりつつ、月の光もおぼろにぞ御覧ぜられける。やや深更に及ンで、「人やある、人やある」と召されけれども、御いらへ申すものもなし。弾正少弼仲国、其夜しも御宿直に参ッて、はるかにとほう候ふが、「仲国」と御いらへ申したれば、「近う参れ。仰下さるべき事あり」。何事やらんとて、御前ちかう参じたれば、「なんぢもし小督がゆくゑや知りたる」。仲国「いかでか知り参らせ候ふべき。ゆめゆめ知り参らせず候ふ」。「まことやらん、小督は嵯峨のへんに、片折戸とかやしたる内にありと申すもののあるぞとよ。あるじが名をば知らずとも、尋ねて参らせなんや」と仰ければ、「あるじが名を知り候はでは、争か尋ね参らせ候ふべき」と申せば、「まことにも」とて、竜顔より御涙をながさせ給ふ。


仲国つくづくと物を案ずるに、「まことにや、小督殿は琴ひき給ひしぞかし。此月のあかさに、君の御事思ひ出で参らせて、琴ひき給はぬ事はよもあらじ。御所にてひき給ひしには、仲国笛の役に召されしかば、其の琴の音はいづくなりとも聞き知らんずるものを。又嵯峨の在家いく程かあるべき。うちまはッて尋ねんに、などか聞出さざるべき」と思ひければ、「さ候はば、あるじが名は知らずとも、もしやと尋ね参らせてみ候はん。ただし尋ねあひ参らせて候ふとも、御書を給はらで申さんには、うはの空にや思し召され候はんずらん。御書を給はッてむかひ候はん」と申しければ、「まことにも」とて、御書をあそばいてたうだりけり。



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〈現代語訳〉


こうして八月十日過ぎになった。それに相応しく曇りのない空であるが、高倉天皇は涙に曇りながら、月の光も涙にかすんでぼんやりと御覧になった。しだいに夜も深くなって、「人はいるか、人はいるか」と天皇はお呼びになったが、お返事を申し上げるものもいない。弾正少弼仲国(だんじょうのしょうひつ・なかくに)は其の夜ちょうど宿直として、はるか遠くに控えていたが、「仲国でございます」と返事を申し上げると、「近くに参れ、申し付けたいことがある。」という天皇の声が聞こえた。何事であろうと、仲国が天皇の近くに参上すると、(高倉天皇)「お前はもしや小督の行方を知っているか。」仲国は「どうして知り申しあげましょうか。全く存じておりません」と答えた。「本当であろうか、小督は嵯峨の辺りで、片開きの扉の家の中にいると申すものがあるぞ。その家の主人の名を知らなくとも、小督を探し出してくれないか。」と(高倉天皇が)おっしゃったので、「家の主人の名を知りませんでは、どうやって尋ね出せましょうか、難しいです。」と仲国が申しあげると、「その通りだ」と高倉天皇のお顔から涙がこぼれなさった。


仲国はあれこれ物を案じて「そうだ。小督殿は琴を弾きなさったものだった。この月の明るさに、天皇のことを思い出し申し上げて、琴を弾きなさらないはずがないだろう。御所で小督が琴を弾きなさった時には、私仲国が笛の役を仰せつかったので、小督の琴の音は、どこであっても聞いてわかるだろうに。また嵯峨の民家もさほど多くない。ひとつひとつまわって尋ねれば、どうして聞き出さないことがあろうか。」と思ったので、「そうでございますなら、主人の名が分らなくても、可能性を信じて、尋ねてみましょう。ただし探し出してお会い申し上げたとしましても、天皇のお手紙を頂かない限りは、いい加減なことに思われますでしょう。天皇のお手紙を頂いて向かいましょうと申したので、天皇は「本当だ」と、お手紙をお書きになってお与えになった。

posted by manabiyah at 00:28| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする