「平家物語」各場面の原文朗読・現代語訳・解説の音声ファイルを公開しています。
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2012年02月09日

10分でわかる「平家物語」巻六「小督」その3(高倉天皇と小督のかなしい恋の物語が終わる)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
再生ボタンをクリックして聴くことができます。(各回10分程度)
右端のDLボタンからダウンロードしてiPodなどに入れて、
繰り返し聴くこともできます。(ページ下に全訳あり。)


「余の御使で候はば、御返事のうへは、とかう申すにはおよび候はねども、日ごろ内裏にて御琴あそばしし時、仲国笛の役にめされ候ひし奉公をば、いかでか御わすれ候ふべき。ぢきの御返事を承はらで帰り参らん事こそ、よに口惜しう候へ」と申しければ、小督殿げにもとや思はれけん、みづから返事し給ひけり。


「それにも聞かせ給ひつらん、入道相国のあまりに恐ろしき事をのみ申すとききしかば、あさましさに、内裏をば逃げ出て、此程はかかるすまゐなれば、琴など弾く事もなかりつれども、さてもあるべきならねば、あすより大原の奥に思ひ立つ事の候へば、あるじの女房の、こよひばかりの名残を惜しうで、「今は夜もふけぬ。立ちきく人もあらじ」など勧むれば、さぞなむかしの名残もさすがゆかしくて、手なれし琴を弾くほどに、やすうも聞き出されけりな」とて、涙もせきあへ給はねば、仲国も袖をぞ濡らしける。


ややあッて仲国涙をおさへて申しけるは、「あすより大原の奥に思し召したつ事と候ふは、御さまなどを変へさせ給ふべきにこそ。ゆめゆめあるべうも候はず。さて君の御嘆きをば、何とかし参らせ給べき。是ばしいだし参らすな」とて、ともに召し具したる馬部、吉上などとどめをき、其屋を守護せさせ、竜の御馬にうち乗ッて、内裏へ帰り参りたれば、ほのぼのと明けにけり。


平家物語連続講義のこれまでの内容を物語の展開順にまとめました。
「平家物語連続講義放送リスト」
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【アイテム紹介】「平家物語」には雅楽の曲が登場する場面がたくさんありますが、その雅楽の曲を平安時代の楽譜に基づいて再現し演奏したのがこの「平家物語の雅楽 / 長谷川景光 」です。この場面で小督が演奏していた「想夫恋」も収録されています。特に雅楽に詳しくない人でも、これを聴きながら平家の人々が生きた時代の雰囲気を「音で」味わうことができますよ!

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平家物語の雅楽 / 長谷川景光 [CD]


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〈現代語訳〉


「私以外の者が使いでありましたら、お返事についてとやかく申すには及びませんが、常日頃、内裏であなたが琴を演奏なさる時、私、仲国が笛の役をして呼ばれ申し上げてお仕えしたことを、どうして忘れましょうか。いえ私は忘れられません。直接のお返事を頂かないで帰り参る事は、とても残念です。」と申したので、小督もなるほどとお思いになったのだろうか、直接自分でお返事なさった。


「あなたもお聞きになっているでしょう。清盛入道があまりに恐ろしいことばかりを申していると聞いたので、私は驚きあきれて内裏を逃げ出して、この頃はこのような住まいであるので、琴を弾くこともなかったのですが、このままここにいるわけにもいかず、明日から大原の奥に思い立つことがございますので、この家の主人の女房が、今夜限りの別れを惜しんで、『今は夜も更けました、立ち聞く人もいないでしょう』などと勧めるので、『本当にそうだ』と思って昔の名残もやはり懐かしく手馴れた琴を弾いていた間に、たやすく聞きつけられたことよ。」と小督は涙をこらえきれなさらないので、仲国も涙で袖を濡らした。


しばらくして仲国が涙をおさえて申したことには、「明日から大原に思い立ちなさるとありましたのは、出家をなさるということでしょう。決してあってはならない事でございます。それでは高倉天皇様のお嘆きをどのようにいたしなさるおつもりですか。」「ここから、お出し申し上げるな」と命じて、ともにやってきた馬の世話の者や、役人たちを残して、小督のいる家を警護させて、仲国は宮中から乗ってきた馬に乗り、内裏に帰り参ったところ、夜はほのぼのと明けてしまった。


posted by manabiyah at 00:00| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする