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2012年03月08日

10分でわかる「平家物語」巻六「入道死去」その2(平清盛が亡くなる)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
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繰り返し聴くこともできます。(ページ下に全訳あり。)


同閏二月二日、二位殿あつうたへがたけれども、御枕の上によッて、泣々、のたまひけるは、「御ありさま見たてまつるに、日にそへて頼みずくなうこそ見えさせ給へ。此世に思し召し置く事あらば、少しものの覚えさせ給ふ時、仰せ置け」とぞのたまひける。入道相国、さしも日来はゆゆしげにおはせしかども、まことにくるしげにて、息の下にのたまひけるは、「われ保元・平治よりこのかた、度々の朝敵をたいらげ、勧賞身にあまり、かたじけなくも、帝祖、太政大臣にいたり、栄花子孫に及ぶ。今生の望一事も残る処なし。ただし思ひ置く事とては、伊豆国の流人、前兵衛佐頼朝が頸を見ざりつるこそ安からね。われいかにもなりなん後は、堂塔をもたて、孝養をもすべからず。やがて打手をつかはし、頼朝が首をはねて、わが墓のまへにかくべし。それぞ孝養にてあらんずる」とのたまひけるこそ罪ふかけれ。


同四日、病ひにせめられ、せめての事に板に水を沃て、それにふしまろび給へども、たすかる心地もし給はず、悶絶躄地して、遂にあつち死にぞし給ひける。馬車のはせちがう音、天もひびき大地もゆるぐ程也。一天の君、万乗のあるじの、いかなる御事在ますとも、是には過じとぞ見えし。今年は六十四にぞなり給ふ。老死にといふべきにはあらねども、宿運忽につき給へば、大法秘法の効験もなく、神明三宝の威光もきえ、諸天も、擁護し給はず。況や凡慮においてをや。


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〈現代語訳〉


同じくうるう2月2日。清盛の妻、時子は、熱さに堪え難かったが、清盛の枕元に酔寄って泣きながらおっしゃったのは「あなたの様子を見申し上げていると、日々に従って回復の望みが少なく見えなさる。この世に思い残しなさることがあるなら、少しでも意識のあありになる時に、おっしゃっておいてください。」とおっしゃった。清盛入道はあれほど日頃は立派でいらっしゃったのに、本当に苦しそうで、その息の下でおっしゃったのは、「私は保元の乱平治の乱以来今まで、たびたび朝廷の敵を平定し、身に余る恩賞を得て、恐れ多くも帝の祖父となり、位は太政大臣にいたって、平家の栄華は子孫にまで及んでいる。現世での望みについて、ひとつも思い残すことはない。ただし思い残すこととしては、伊豆の国に流した前兵衛佐の頼朝の首を見なかったのは満足ではない。私が死んだ後は、堂や塔を建てて供養することはするな。すぐに頼朝に討手を遣わして、頼朝の首をはねて。私の墓のまえに供えよ。それが孝行であるだろう。」とおっしゃったのは罪深い。


同じく、うるう2月4日、清盛は病いに襲われ、せめてもの手段として板に水を注いで、そこに横になりなさったが、助かる心地もしなさらない。もだえ苦しみ気絶して地に倒れて、とうとう、「あつち死に」をしなさった。馬や車がすれ違う音は、天にも響き、大地をゆるがす程である。天下国家に君臨する天皇に万一のことがあったとしても、この清盛の死ほどどの大ごとにならないだろうと思われた。清盛は今年64歳になりなさった。老い死にというべきではないが、定められた寿命がすでに尽きなさったので、密教の秘法による祈りの効果もなく、神や仏の威光も消えて、天の神々も清盛をお守りにならなかった。まして普通の人間の知恵では、もうどうにもならない。

posted by manabiyah at 00:00| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする