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2012年05月17日

10分でわかる「平家物語」巻七「篠原合戦」その2(敵に情けをかけ自分の命を落とす高橋判官長綱)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
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次に平家の方より高橋判官長綱、五百余騎ですすんだり。木曾殿の方より樋口次郎兼光・落合の五郎兼行、三百余騎で馳向ふ。しばしささへてたたかひけるが、高橋が勢は国々のかり武者なれば、一騎もおちあはず、われ先にとこそおちゆきけれ。高橋心はたけくおもへども、うしろあばらになりければ、力及ばで引退く。ただ一騎落ちて行ところに、越中国の住人入善の小太郎行重、よい敵と目をかけ、鞭あぶみをあはせて馳せ来たり、おしならべてむずとくむ。


高橋、入善をつかうで、鞍の前輪におしつけ、「わ君は何者ぞ、名のれ聞かう」どいひければ、「越中国の住人、入善小太郎行重、生年十八歳」となのる。「あなむざん、去年おくれし長綱が子も、ことしはあらば十八歳ぞかし。わ君ねぢきてすつべけれども、たすけん」とてゆるしけり。


わが身も馬よりおり、「しばらくみかたの勢またん」とてやすみゐたり。入善「われをばたすけたれども、あッぱれ敵や、いかにもしてうたばや」と思ひ居たる処に、高橋うちとけて物語しけり。入善、すぐれたる、はやわざのおのこで、刀をぬき、とんでかかり、高橋がうちかぶとを二刀さす。さる程に、入善が郎等三騎、おくればせに来ておちあふたり。高橋心はたけくおもへども、運やつきにけん、敵はあまたあり、いた手は負うつ、そこにて遂に討たれにけり。


平家物語連続講義のこれまでの内容を物語の展開順にまとめました。
「平家物語連続講義放送リスト」

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〈現代語訳〉


次に平家軍から高橋判官長綱というものが500騎で進みでた。木曽の方からは樋口次郎兼光・落合の五郎兼行、が300騎で馳せ向かった。高橋はしばらく持ちこたえて闘ったが、高橋の軍勢は諸国から臨時に集めた武士だったので、一騎も刀を合わせようともせず、我れ先に逃げていった。高橋は心では勇ましく思っていたが、後方の軍勢がまばらになったので、力及ばすに退却した。ただ一騎で落ちのびていくところに、越中の国の住人で入善(にゅうぜん)の小太郎行重(ゆきしげ)という者が、ちょうどいい敵がいると目を付けて、馬に鞭をあて、あぶみを蹴り馬を走らせて、高橋に並んでむんずと組み合った。


高橋はその入善をつかまえて、馬の鞍の前輪におしつけて、「お前は何者だ、名乗れ、聞こう。」といったので、「越中の国の住人、入善小太郎行重、18歳である。」と名乗った。「ああいたわしいことだ。去年、亡くなった私長綱の子も、今年生きていれば18歳だよ。本来ならお前の首をねじ切って捨てるところだが助けよう。」と許した。


高橋自身も馬から降りて、「しばらく味方の軍勢が来るのを待とう」と休んでいた。入善は「私を助けたとはいえ、こいつは、なんとも素晴らしい敵だ、なんとしても討ち取りたい。」と思っていたところ、高橋はうちとけて語り合っていた。入善は優れた早業の男で、刀を抜いて、飛びかかって、高橋のうちかぶとに刀を二刺しした。そうしているうちに入善の郎等が三騎、遅れて馬を馳せてやってきて合流した。高橋は心では勇ましく思ったが、運が尽きてしまったのだろうか、敵はたくさんおり、痛手を負ってしまい、その場で遂に討たれてしまった。

posted by manabiyah at 00:00| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする