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2012年06月07日

10分でわかる「平家物語」巻七「木曾山門牒状」(木曾義仲から比叡山に書状が送られる)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
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木曾、越前の国府について、家子郎等めし集めて評定す。「抑も、義仲近江国をへてこそ都へはいらむずるに、例の山僧共は防ぐ事もやあらんずらん。かけ破ッてとほらん事はやすけれども、平家こそ当時は仏法ともいはず、寺をほろぼし、僧をうしなひ、悪行をばいたせ、それを守護の為に上洛せんものが、平家とひとつなればとて、山門の大衆にむかッていくさせん事、少しもたがはぬ二の舞なるべし。是こそさすがやす大事よ。いかがせん」とのたまへば、手書に具せられたる大夫房覚明申しけるは、「山門の衆徒は三千人候ふ。必ず一味同心なる事は候はず、皆思ひ思ひ心々に候ふ也。或いは源氏につかんといふ衆徒も候ふらん、或は又平家に同心せんといふ大衆も候はらん。牒状をつかはして御覧候へ。事のやう返牒に見え候はんずらむ」と申しければ、「此儀尤しかるべし。さらば書け」とて、覚明に牒状かかせて、山門へおくる。


其状に云、「義仲、つらつら平家の悪逆を見るに、保元平治よりこのかた、ながく人臣の礼をうしなふ。然りといへども、貴賎手をつかね、緇素足をいただく。恣に帝位を進退し、あくまで国郡を虜領す。道理非理を論ぜず、権門勢家を追捕し、有罪無罪をいはず、卿相侍臣を損亡す。其資財を奪ひ取ッて悉く郎従にあたへ、彼庄園を没取して、みだりがはしく子孫にはぶく。」


平家物語連続講義のこれまでの内容を物語の展開順にまとめました。
「平家物語連続講義放送リスト」

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【アイテム紹介】「平家物語」以前の物語が描かれているのが「保元物語」「平治物語」。「平家物語」に比べて出版されている本の種類も少ないのですが、この小学館の「日本古典文学全集」のシリーズは「原文・現代語訳・注」が段組みになっていて非常に便利です。平将門の乱を描いた「将門記」や、前九年の役を描いた「陸奥話記」も収録されています。

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新編日本古典文学全集 41

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〈現代語訳〉


義仲は越前の国府に到着して、従者達をよび集めて会議を行った。「そもそも私義仲は、近江の国を経由して都へ入ろうとするのだが、いつもの僧侶たちによる妨害があるだろうか。彼らの軍勢をかけ破って通るようなことはたやすいが、平家は現在、仏法を無視して寺を滅ぼし、僧を殺して、悪い行いをしているが、その平家から都を守るために都に入るようなものが、平家もやっているからということで、比叡山の衆徒たちと闘うことは、少しも平家と違わず、平家の二の舞になるだろう。これはやはり簡単に見えて、実はおおごとだろうと、どうしよう。」とおっしゃると、文書を書かせるためにお連れになっていた大夫房(だいぶぼう)覚明(かくめい)が申したことには、「比叡山の衆徒は三千人おります。必ずしも皆が心を同じくしていることはありません。みな思い思い、それぞれの考えでしょう。あるいは源氏につこうという衆徒もいるでしょう。またあるいは平家と心を同じくしようという衆徒もいるでしょう。書状を送ってごらんください。事の様子が返事の書状に表されるでしょう。」と申したところ、(義仲は)「このことは、もっともだ。その通りにしよう。ならば書け。」と覚明に書状を書かせて、山門へ送った。

その書状にいうには「私、義仲がつくづく平家の悪行を見ると、保元の乱、平治の乱から今にいたるまでずっと帝の家臣としての礼儀を失っています。そうだといっても、身分の高い者も低い者も手を合わせ平家を敬い、僧侶も一般人もみな平家にひざまづいています。思うがままに帝の位を動かし、好き放題所領を奪い領地とし、道理の有無に関わらず、他の勢いのある一族や家の者を捕らえ、罪の有無に関わらず、公卿や大臣、近臣たちを処刑した。その資材を奪ってことごとく自分の家来に与え、その荘園を没収して、みだりに平家の子孫に分けた。」


posted by manabiyah at 00:00| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする